業績好調なはずの「セブン-イレブン」が大量閉店する必然的理由
株式会社セブン&アイ・ホールディングス(セブン&アイHD)は2019年10月10日「グループ戦略と事業構造改革について」と題して、コンビニ、イトーヨーカドー、そごう、西武の大量閉店を実行していくことを発表しました。
なかでも、コンビニの雄であるセブン-イレブンが、1000店舗もの閉鎖・立地変更(2021年2月まで)に踏み切るという発表は、ショッキングでした。一体なぜ?
セブン&アイHD全体は、決算発表を見ても業績が悪化しているようには見えません。本記事では、このように一見すると黒字経営を堅調に行うセブン&アイHDが、大量閉店を発表する背景と閉店を予定している店舗の具体名を、多数の企業経営・買収の経験を持つ筆者が説明します。
セブン&アイHDの会社業績は実は悪化していない?
今回、セブン&アイHDは、コンビニ、イトーヨーカドー、そごう、西武といった主要な事業での閉店を発表しました。通常、このような店舗の大量閉店は、営業赤字が続き、現金残高が減少し資金繰りが厳しくなってきた企業が採る施策です。
一方で、セブン&アイHDの営業収益(一般的な企業の売上高に相当、店舗の売り上げではなくフランチャイズ店舗からのロイヤリティ収入形式のため「売上高」ではなく「営業収益」という呼び方になっている)を見てみると、2015年以降、安定して6兆円前後を保っていることがわかります。
また、年間の営業利益(売上高から費用を差し引いた「利益」)は2015年2月時点では約3400億円でしたが、2019年2月時点では約4100億円と拡大傾向にあります。それ以降、直近の数か月間で急速に赤字になったわけでもなく、3月~8月の6か月間で2030億円の営業黒字となっています。昨年同期間(2018年3月~8月)の6か月間は1969億円の営業黒字であり、黒字幅は増加しています。
また、現預金残高を見ても昨年の同じ時期よりも増加傾向にあり、資金繰りが厳しいとは言い難い状況にあります。セブン&アイの業績全体を見ると業績良好な企業であると言うことができます。
イトーヨーカドー、そごう、西武はなぜ閉店するか?
会社全体としては業績が良好なはずのセブン&アイHDですが、セグメント別に見てみると、事情が大きく異なります。営業収益に占めるイトーヨーカ堂、そごう、西武の比率を見てみましょう。
イトーヨーカドーが含まれるスーパーストア事業は2016年2月時点はセブン&アイHDの売上全体の約33%を占めていましたが、2019年2月には28%と減少しています。そごう、西武が含まれる百貨店事業は、13%から9%へと減少しています。セブン&アイHD全体に占めるこれらの事業の相対的な重要性が急速に低下していることがわかります。
営業利益を見てみると、事態はさらに深刻です。セブン&アイHDの説明によると、昨年と比較した、コンビニ事業は国内海外合わせて99億円の営業利益増加に対して、イトーヨーカドー、そごう、西武は合計約31億円の営業利益減少となっています。
セブン&アイHDにおいては、成長を続け収益増となっているコンビニ事業に対して、事業が急速に縮小し足を引っ張っているのがイトーヨーカドー、そごう、西武ということがわかります。