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物価上昇は止まらない…それでも「政府が増税を進める理由」を京大教授に聞く

ビジネス

財務省の発言力が強い理由

「財務省は与党に対する影響力がとても強く、財務省の増税することが正義であるという価値観が浸透しています。特に岸田文雄首相は『国民のために必要な政治をしなければならない』という意思が薄弱なのかもしれません。『国益を度外視しても税率を上げることが正しい』という認識にほぼほぼ支配されており、増税については財務省の操り人形のような政治を展開しているように感じます

 政府が財務省の意向を気にする理由が知りたい。そんな素朴な疑問に藤井氏は“持論”を展開しつつ答えてくれた。

「財務省は予算編成権があります。政治家は自分がやりたい政策を行うための予算を、財務省に媚びて確保しなければいけません。さらには、財務省は『日本の借金は1200兆円!』『増税しないと日本は破滅する!』といった緊縮路線が正しいことであるかのようなプロパガンダを、マスコミを使って徹底的に周知しています。そういった誤った思想が国民に浸透しているため、財務省に媚びたほうが世論や財界の支持を得やすいのです

日常会話から意識改革を始める

財務省

「また、財務省は国税庁の査察権を握っています。つまりは財務省の意に反する言動をした政治家は、税金に関する申告漏れなど税務調査を実施されるリスクがあります。後ろ暗いことがある政治家だけでなく、そうではない政治家も怖気づいてしまい、消費税などに関する批判がなかなかできません。政治家にとって財務省の顔色をうかがうことの合理性は幸か不幸かこうした事情で極めて高いのです

 衆議院選挙や参議院選挙といった大型選挙がしばらく開催されないため、国民の声が届きにくいタイミングでもある。政府が適切な政策を講じるために、人々が今できることは何かあるのか

「できることは限られていますが、SNSで政府の対策について問題があると思うことを批判する、また、批判している人の意見を支持する(いいねを押す)、拡散する、といったことがあります。そして、友達や職場の人との日常的な会話でも、そういった話題を頻繁に出すことで、身の回りの人達の政治意識を活性化していくことも重要です。一見無駄に思えるような『草の根運動』でも、大勢でやればいずれ強大な力を発揮するでしょう」

 投票率の低さが示しているように多くの国民は半ば諦めモードなのかもしれない。しかしながら、1人ひとりが自分の頭で考え、発信を続けなければ何も変わらないだろう。

<取材・文/望月悠木>

【藤井 聡】
京都大学大学院工学研究科教授。元内閣官房参与。京都大学レジリエンス実践ユニット長。1968年、奈良県生まれ。京都大学卒業、同大学院修了後、同大学助教授、東京工業大学教授等を経て現職。2012年より2018年まで安倍内閣・内閣官房参与にて防災減災ニューディール政策を担当。『なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』(ポプラ新書)など著書多数。2018年より「表現者クライテリオン」編集長。

フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている
Twitter:@mochizukiyuuki

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