映画『SLAM DUNK』が社会現象に!“必見ポイント”をバスケ解説者に聞く
「モップがけ」のシーンに注目
──漫画の場合、自分のペースで読むので、試合のスピード感は読者自身が最高のテンポに調整できると思います。それが映画になると、万人に同じ時間で見せなければいけない部分は難しいようにも思えますね。
クリス:その視点でいうと、試合後半でゲームが止まって、両チームがハドル(集まっての作戦会議)を組んでしゃべる場面があります。ここで、モップがけのスタッフがコートに落ちた汗を拭く場面が挿入されていました。
──たしかに、モップがけは実際の試合でもよく見かけるなと感じました。ただ、このポイントを取り立てて注目したのはなぜですか?
クリス:実際の高校バスケの試合では、こんなにハドルを組むような時間はなく、すぐにゲームが再開されます。なので、本当だったら、バスケ経験者はこの時間の長さに違和感を持つはずなんですよ。
──しかし、ここでの会話はキャラクターごとの思いなどを語らせるために必要ですね。
クリス:あくまで想像ですが、「試合後半で汗だくの選手が倒れたから、しっかりモップをかけなくてはいけない」という、ゲームが長く止まる合理性をつけたんじゃないかと思いました。すごい作りですよね。
漫画では描きにくい部分もしっかり描写
──時間が流れている感覚というのは、スポーツを描くのには重要なファクターですね。
クリス:他にも、桜木が1度ベンチに下げられて、安西先生に「オフェンシブリバウンドを取ってくるのが仕事だ」と告げられるシーンがありますね。原作だとおそらく、桜木と安西先生だけしか描かれていなかったように記憶しているんですが、映画だとちゃんと背後で試合が動いているんです。
──漫画では描きにくい、さまざまな人が同じ時間軸を過ごしている感覚ですね。
クリス:選手たちがコートを走っている間に、スコアボードのシュートクロックがカウントダウンされている様子など、当たり前なんですが、このあたりがとても重要なんだなと思います。バスケを長くやっていると、時間の感覚が刷り込まれてくるんですよ。
現代では、ボールを持ってから24秒以内にシュートを打たなければいけないということが、体に染み込んでいるので、コート外の会話で時間が止まると違和感があったかもしれませんが、そういう部分にも配慮されて作られているんだと感じました。