井浦新、下積み時代の葛藤を語る「20代は迷って遠回りしてもいい、ただ…」
人との出会いがいつの間にか夢に繋がっていく
――若松監督と出会う以前、本作で門脇麦さんが演じられた主人公のように、何かをしたいのだけれど、それがなんなのか分からないという時期は、井浦さんにもありましたか?
井浦:もちろんです。何がしたいのか分からないから、とりあえず大学に行くといった時期も過ごしましたし、逆に無駄にでかい夢を持ってもがいていたこともありました。それが、ひとりでもがくのではなく、だんだん人との出会いやご縁から生まれてきたものが、いつの間にか夢に繋がっていくようになった。でもそれも自分の好きなことを続けてきたからだと思います。
――井浦さんは、最初はモデル業からスタートされています。それはやりたいことだったのでしょうか?
井浦:やりたいことに関わることでした。洋服や物を作ることに興味があったので。仕事というのは、本当に人とのご縁でやらせてもらえるんだなと思っていますが、モデル業も自分からではなくて、スカウトされたのが始まりでした。そして現在の俳優業と、ファッションの仕事に繋がっています。
迷ってもいい、でも止まってはダメ
――人との縁と、踏み出したことによって、自分の好きなことが明確に見えてきたり、補強されていったのでしょうか?
井浦:そうだと思います。ただ時間はかかると思います。僕だって、今も何かを手に入れているかといったら、まだ何も手に入れているわけではない。23歳で役者と洋服屋を始めて、今も有難いことに続けられてはいますけど、何かを成しえているかといったら、全然まだまだです。
迷って遠回りすることを悪いとは思いません。ただ止まってちゃダメだと思う。20代で走り始めて、30代で若松監督に出会ったりして夢中に走って、40代でもそのまま突っ走っている。50代になってもそうだろうなって。嫌なことなら辛い人生だけれど、好きなことをやらせてもらえているので、夢中になって走っていられるのだと思います。
――“好き”だというのは重要なキーワードですね。
井浦:結局、それだけだと思うんです。でも、それを見つけるのに、一発目で見つけてそのまま突っ走れるかといったら、そう甘いものでもない。選んでは捨てて、選んでは捨てて、時に迷いながら「違った、また戻ってやり直しだ」と繰り返していくなかで、人生をかけて夢中になれることは、やっぱりこれなんだと残っていくのだと思います。
――本作でも若者たちがもがいています。まだ若い読者に、最後にメッセージをください。
井浦:若松監督や若松プロダクションを知っている世代に観てもらって、批判や批評されることも楽しみですが、一番興味があるのは若い世代の反応です。映画を作りたい、これをしたいということに夢中になって走っている姿が、この映画には映っています。
ただ少し前の時代の話じゃなく、今の私たちと繋がっていて、こんな風に生きてみたい、生きられるのかなと、心を動かすことができるものになっていたらと思うし、20代の方にどう届くのか、とても興味があります。
<取材・文/望月ふみ 撮影/市村円香>
『止められるか、俺たちを』は10月13日(土)より全国順次ロードショー
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