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インボイス制度が声優業界にもたらす衝撃、「廃業するかも」声優らの嘆き

ビジネス

 2022年7月に開催された参議院選挙で自民党が勝利したことにより、2023年10月にインボイス制度が施行される可能性が高くなった。インボイス制度が施行された場合、免税事業者から課税事業者へのシフトを迫られ、多くの事業者が経済的に追い込まれかねない。

インボイス

画像はイメージです

 特にお笑い芸人や俳優、アニメーターなどエンタメ業界に従事する人達を苦しめかねない制度であり、同様に大きな負担を強いられそうなのが声優だ

 3人の声優(咲野俊介、岡本麻弥、甲斐田裕子)が立ち上げた有志グループ「VOICTION」@VOICTION)が声優を対象に実施した調査結果によると、「2023年10月にインボイス制度が導入された場合、ご自身の声優としての仕事は増減すると思いますか?」という問いに対し、約4人に1人が「廃業するかもしれない」(23%)と回答している。

 声優業界の厳しい懐事情を聞いた前編の記事「コロナで顕在化した業界の懐事情」に引き続き、今回の記事ではインボイス制度が声優業界に与える影響について、VOICTIONの広報も務め、自身も声優として活動する福宮あやの氏に聞いた。

【前回の記事】⇒「5%に仕事が集中」現役声優が明かす、コロナで顕在化した業界の懐事情

コロナ禍に加えてのインボイスは泣きっ面に蜂

 2021年の衆議院選挙、2022年の参議院選挙で自民党が勝利したことにより、インボイス制度施⾏を回避することが困難になった。まずは現在抱いている危機感を聞いた。

「コロナ禍の分散収録によって“人気声優に仕事が偏る”という傾向はますます強くなり、安定した生活を送ることができない声優が増えています。この状況でインボイス制度が施行されると、声優として働き続けられなくなる人は少なくないでしょう

 事務負担と増税負担は、まだ実績の少ない新人や、経済的に弱い立場の声優を直撃します。確かに業界全体を⾒ると供給過多気味であり、『プレイヤーが多い状態』であることも否定できません。しかし一方で、業界に携わる⼈数は即ちその業界の質を担保し、国際社会においても競争⼒のあるコンテンツを産むことにつながります。

 質の落ちたエンターテインメントは、果たして⼈の⼼に届き、ひと時の癒しや感動を⽣むことができるのでしょうか。インボイス制度がエンターテインメントの世界を狭めてしまうのではないかと、強い危機感を持っています」(福宮氏、以下同じ)

事務所とのパワーバランスが変化する?

VOICTION

VOICTIONのメンバー

 作品のクオリティ低下も予想されるが、インボイス制度が導⼊された際に生じる悪影響は他にもあるのか。

事務所と所属者の⼒関係の変化も懸念しています。事務所に所属せず個人で活動する声優は、インボイス制度の導⼊によって⾮常に弱い⽴場に追いやられます。発注する企業は請求書のインボイス番号が正しいかを逐⼀確認せねばならないため、新しい事業者、とりわけ個⼈への発注に“煩わしさ”を感じ、事務所に所属していない声優への発注が減らされる可能性が⾼いためです

 そのため、これまで以上に事務所を辞めて個⼈で活動するということのハードルが⾼くなります。そうなると、事務所を辞めたくても、辞められないという⼈が増え、個⼈の⽴場が弱くなるかもしれません。その場合、ハラスメントの横行など、それに付随する弊害が⾄るところで出てくるのでは、と懸念しています」

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