専門性が高いのに1年契約…学校カウンセラーの理不尽な雇用実態「いきなり雇止めに」
雇止めの不安を毎年抱える
毎年の契約更新の可否は、校長による業績評価を主に参考にして判断されることになっている。心理職ユニオンの情報公開請求によって明らかになった評価基準を見ると、「職務遂行力」「積極性」「勤勉性」「協調性」を4段階で評価するようになっているが、いずれも抽象的で校長の恣意的な判断がいくらでも入り込むように見える。
評価結果がスクールカウンセラーに公開されることもない。スクールカウンセラーは、校長による非常に不透明かつ恣意的な業績評価による雇止めの不安を毎年抱えることになる。
「私はスクールカウンセラーの収入を頼りに生活しています。突然切られてしまうと生活に困ってしまいます。しかも雇用保険や厚生年金にも加入させてもらえないので、雇用が切られても失業手当を受け取ることができません。スクールカウンセラーの友達はみんな採用決定通知が送られる時期には不安定になりますし、『人の相談にのってる場合じゃないよね』ってよく話しています」
アンケートではスクールカウンセラーの収入の使い道についても聞いているが、回答者の60%が「生活費の主要な部分」と回答していた。突然の雇止めや勤務校数削減はスクールカウンセラーに大きな生活困難をもたらすことになる。スクールカウンセラーの生活を守るため、またその専門性の発揮を支えるため、その雇用の安定が不可欠だろう。
心理職ユニオンで雇止めストップに
鈴木さんが心理職ユニオンに参加することにしたのも、自身の雇止めの危険を感じたときだった。突然勤務曜日の変更を学校から伝えられ、それに応じることが困難だった鈴木さんは、「このまま雇用を切られるかもしれない」と感じ、知り合いのスクールカウンセラーの紹介で心理職ユニオンに相談したのだ。
その時には、最終的に学校が対応してくれたためユニオンの出る幕はなく解決したが、「怒りと不安に駆られた時に相談できる場があるのは大事だと思った」という。心理職ユニオンの親組合であり非正規の公務員の待遇改善に取り組む労働組合、東京公務公共一般労働組合の書記次長である原田仁希さんによれば、1年間の有期雇用である会計年度任用職員でも、雇止めを食い止めることは可能だという。
「労働組合は雇主と交渉をする権利を持っているので、自治体と交渉することによって会計年度任用職員の雇止めを食い止めることも可能です。実際雇止めされそうになったスクールカウンセラーがうちの組合に加入して自治体と交渉し、雇止めを食い止めたこともあります」(原田さん)
原田さんは、「ぜひ困ったときにはあきらめないで心理職ユニオンに相談してほしい」という。鈴木さんも「相談先があることが、もっとスクールカウンセラーに広がってほしいと思っています」と話す。今後はアンケート結果をもとにして雇い主である東京都教育委員会との団体交渉などを行っていくそうだ。
<TEXT/栗原耕平(首都圏青年ユニオン副委員長)>