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安倍元首相の国葬の“議論なき決定”は、なぜおかしいのか

ビジネス

山積みの問題の中、民主的な議論がなされるのか

 閣議決定が法律などを超える決定権を持った場合、それは民主的な体制ではなくなってしまいます。内閣は国会議員とは別の組織です。主権者である僕らの代理人である国会議員のチェックが入らない決定は民主的な決定と言えるのでしょうか? こういった議論が、この国葬に関してたくさん出てきます。

“民主主義への挑戦”という理由を挙げているので、国葬に賛成の人こそ民主的なプロセスを経て決定することをぜひ遵守してほしいと思います。一方で、今まで行なったことのある国民葬や合同葬のほうが警護だったりもスムーズなのではないかという意見もあるでしょう。もちろん、やらないという選択肢もあります。諸々の議論を経た上で、一番いい方法をとってほしいです。

 問題は他にもありますね。まず、3週連続で世界でもっともコロナ感染者数が多い状況(8月12日時点)において、政府の対策の不作為への議論が当然あるはずです。そんな無責任な状況で、政府に外国要人を招くようなセレモニーを開く資格があるのでしょうか

 さらに、選挙期間中の政治家が銃撃される事態を招いてしまった警護の責任者であるはずの警察もまだ一切の責任を取っていません。そんなゆるゆるの無責任体制の警備体制で外国要人をたくさん招くような儀式を開催する資格があるのでしょうか。

別の意味で“民主主義への挑戦”が浮き彫りに

安倍晋三

※首相官邸HPより

 そして現在、各メディアが報道しているように、そもそもこの事件を契機に別の意味で“民主主義への挑戦”が浮き彫りになっています。旧統一教会が政治家との距離をかなり詰めてきていて、当落線上の候補者の選挙結果に影響を及ぼしている疑惑、また、政治家たちが主張している法案の骨子の考え方が宗教団体の影響を受けている疑惑が出ています。

 安倍さんを銃撃した山上容疑者は動機として、旧統一教会の信者である母親の多額の献金が家庭の崩壊を招いたことをあげています。そこで旧統一教会の関連団体に対してビデオメッセージを送った安倍元首相を狙ったのです。

 国葬の当事者である安倍さんは、事件の引き金となったメッセージ以外にも祖父の岸信介元総理時代からの教団との関わりや、自身の元政務秘書官である井上義行参議院議員、宮島喜文元参議院議員らへの票の差配も指摘されています

 安倍派の下村博文元文部科学相のもとでの教団の名称変更問題、派閥の前の領袖・細田博之衆議院議長の教団との関係も適切だったのかが問われています。

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