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“1家に1個”接着剤メーカー「高シェアなのに上場廃止」になる厳しい現実

ビジネス

家庭用は1%以下という現実

 セメダインは一家に1つあると言ってもいいほど、身近でよく知られているブランド。カネカの支援が必要な会社だということに驚くかもしれません。実は、家庭用の接着剤は全体から見れば“取るに足らない”ものです。

 日本接着剤工業会によると、2021年の家庭用接着剤の出荷量は5116トン。接着剤全体の出荷量は75万トンであり、家庭用はわずか0.7%ほどしかありません。これはセメダインの売上構成にも表れています。

セメダイン

売上構成※決算短信より

 セメダインの売上高全体に占める家庭用の割合は17%。セメダインの主力は建築土木、工業関連向けの接着剤です。特に建築土木への依存度が高く、戸建て住宅のシーリング材や内外装タイル用接着剤などを出荷しています。事業拡大の潜在力が高いのは、この建築土木です。

 しかし、人口減少が進む国内の住宅着工数が減少傾向にあるのは明らか。国土交通省によると、2020年の新築住宅着工戸数は81万2000戸。2008年と比較をすると、22万7000戸も減少しています。セメダインの主力事業が、じりじりと縮小するのは目に見えています。いち早く海外攻略をしなければなりません。

ヘンケルとの共同歩調に終止符

 情報サービス業のグローバルインフォメーションによると、世界の接着剤(シーラント含む)の2020年の市場規模は600億ドル。2021年から2028年にかけて年平均成長率6.0%で伸びるとの予想を出しています。力強く成長している分野です。ただし、海外には強力なメーカーが存在します。2割程度の高シェアを獲得しているドイツのヘンケル、住宅系に強いスイスのシーカ、工業用製品を主力にしているH.B.フーラーなどです。

 セメダインは1999年にヘンケルと合弁会社セメダインヘンケルを設立。自動車用接着剤の分野でタッグを組みました。ヘンケルはセメダインの第三者割当増資を引き受け、セメダインの主要株主にもなっていました。2001年5月にはヘンケルがセメダインを買収するとのニュースも駆け巡りました。

 しかし、両社は距離を置くようになり、セメダインはカネカの傘下に入りました。ヘンケルはパートナーではなくライバルとして戦う道を選んだのです。共同で設立した会社はセメダインオートモーティブへと名前を変え、2017年にセメダインが吸収合併しています。

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