昼は鰻屋、夜は居酒屋…「紅とん」が仕掛ける“コラボ戦略”は三方良しとなるか
若者に人気のメニューは「チョレギサラダ」
「紅とん」自体としても、若者向けのメニューを増強。かつて定着しなかったメニューの人気が着実に上昇するなど、改革は好調のよう。
「これまでも何度かサラダのメニューを出したこともあったのですが、売上が伸びず、定番化にはいたっていなかったんです。『紅とん』グランドメニューには野菜のカテゴリがあるものの、『ネギ盛り』『味噌かぶ』『梅きゅう』など、酒好きが好むような、素材そのものに近いメニューばかり。
ところが最近あらためて『チョレギサラダ』の提供を開始すると、若い方たちから注文を多くいただき、定着させることができそうです。赤提灯らしさを大切にしつつ、若者向けの新メニューもどんどん開発していきます。
ちなみに『紅とん』は23区以外に出店していないのですが、これは食材へのこだわりのため。ブランドとして納得できる食材の仕入れと流通を拡大することが非常に難しく、安易な進出を行わない判断をしています。こだわって仕入れた食材でも、安価で気安く楽しめるのが赤提灯ならではの魅力。値上げラッシュなど厳しい状況は続きますが、若い世代にもどんどん楽しんでもらえるよう務めています」
赤提灯文化を継承していきたい
「コロナの影響だけでなく、いわゆる『飲みニケーション』文化が煙たがられがちなご時世でもあります。もちろん、飲みの場や無理な飲酒を強要することがあってはなりません。けれど『顔を突き合わせて飲み食いする』ことで得られるものまで失ってほしくない。
ひいては、それを支えてきた『赤提灯文化』を大事にしたいし、これからも継承していきたい。こうした思いを私個人としても、社としても大きく持っています。
だからこそ、次世代へ赤提灯の良さをアピールすることは必要不可欠。常連のお客様にとっての居心地はそのままに、若者世代にも魅力を発見してもらうためにはどうすればよいのか。コラボ店舗の展開は、この課題への取り組みでもあるんです」
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Z世代では飲み慣れていない人も少数派ではなく、居酒屋への入店をためらってしまう人が大勢いるのもうなずける。しかし、1人でも複数人でも気軽にいつでも楽しめる、赤提灯のよさは令和の世でも変わらないはずだ。
異例コラボの裏側には、「赤提灯文化」の灯火を守ろうとする、居酒屋チェーンの本気の使命感が存在していた。
<取材・文/海原あい 編集/ヤナカリュウイチ(@ia_tqw)>