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4兆円の時価総額が消滅…仮想通貨「LUNA」に起こった大暴落の背景

コラム

「お金を刷りたい」と思ったことがないだろうか。中央銀行のように自由にお金を刷れたらお金持ちになれる。シンプルで分かりやすい夢だ。急成長しつつあった分散型金融システム、DeFi(Decentralized Finance)の一角であったTerra(LUNA)はまさにそれを目指したプロジェクトであった。

Terra

※Terra公式サイトより

 筆者は2014年からブロックチェーンに携わっているが、こういった夢のプロジェクトはDeFiの世界では幾度も試みられては失敗してきたのだが、その中で最も成功したのが「Terra(テラ)」だ。テラUSDの基軸通貨「LUNA(ルナ)」は時価総額4兆円以上にも達し、仮想通貨時価総額ランキングでも上位に位置するアルトコインとして認識されていた。

「$UST」は2兆円を超える流通量が

 テラから発行されたアルゴリズムステーブルコイン「テラUSD」は1ドルの価値をアルゴリズム的に維持するようにできており、実際に1ドルとして通用した。そして、その流通量は日本円にして2兆円を超えるほどになった

 これは現実世界から考えると全く常識を超える現象だろう。国家による法定通貨ではなく、1つのプロジェクトが作ったお金が2兆円に達しそれを皆が使用していたのだ。しかもそれは皆がイメージするようなただの投機用の仮想通貨としてではなく、韓国ではChaiという決済アプリを利用して現実に実際に普及していた。

 これらはブロックチェーンを使用していることを極力意識しないように作られていたのでユーザーはほとんど仮想通貨を使用している感覚はなく、一方で決済手数料は従来より大幅に下げられるというメリットがあった。そんな実世界にも浸透しつつあった魔法のインターネットマネーは、突如として終わりを迎えた

「テラUSD」が1ドルを維持した仕組み

UNA

Terra LUNA cryptocurrency logo © Rimidolove | Dreamstime.com

 テラUSDの価格を維持する仕組みはこうだ。まずテラUSDとLUNAはセットである。

 テラUSDの需要が高く、1ドルより高くなった時に、テラUSDを発行して売ることで1ドルに落とす。そしてその利益でLUNAを償却する。逆にテラUSDの需要が低く、1ドルより低くなった時には、テラUSDを買って償却することで1ドル分のLUNAを得ることができる。それを売ることでLUNAが下がりながら1ドルに戻るとされていた。

 この仕組みにより、高い時も低い時も裁定取引の力によって1ドルに戻るようになっており、それはうまく機能し続けた。だからこそ、2兆円にも流通量が達し、DeFiのエコシステム上に大きく浸透したのだ。LUNA自体も、テラUSDが増えれば増えるほど数が減っていくために価格が上昇していく仕組みであったために、底値より100倍以上のパフォーマンスを誇った。

 テラUSDの需要がここまで高まった理由のひとつには、テラ上に存在するAnchorというプロトコルが影響している。これは好景気の時は準備金を貯めこみ、不景気に吐き出すという景気の調整弁としての機能を持っていた。

 そして仮想通貨市場は不景気だった。好景気の年利20%はさほど見向きもされず、エコシステムは順調に適度に成長した。一方で不景気の年利20%はとんでもない魅力だ。これが引き金の一端になったのは否めない。Anchor自体もこれは持続可能性がないとして、利率を徐々に下げていくと表明していた。それでもテラUSDは許容を超える以上に発行されてしまったのだ。

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