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本屋が20年で半減。閉店相次ぐ「大手書店チェーン」の生き残り策とは

ビジネス

未来屋書店:ラウンジ・カフェ併設店舗が増加中

 ショッピングモールでよく見かける未来屋書店。これは同社が100%イオン傘下であるためです。イオンの書店事業と言って良いでしょう。ただしイオンモール内の書店が必ずしも未来屋書店であるとは限らず、他の店舗が入ることもあります。

 未来屋書店には文房具や雑貨類も置いていますが、特徴は少なく至ってシンプルな書店です。同社も非上場のため決算公告から業績を見ていきます。2018/2期から2021/2期までの業績は次の通りです。

【未来屋書店(2018/2期~2021/2期)】
売上高:561億円⇒525億円⇒508億円⇒502億円
純利益:-15.3億円⇒-5.3億円⇒-1.3億円⇒1.6億円

 近年では売上高が縮小する一方、赤字幅を縮めることに成功しています。ただし2021/2期は黒字化しているとはいえ、丸善や紀伊國屋書店と比較すると規模の割には利益は小さいといえます。業績要因が公表されていないため憶測にすぎませんが、同社はイオン傘下という性質上、それ単体で利益を得ることよりもイオンモールの集客につなげることが目的と思われます

 書店からの利益がゼロであっても、消費者が他のテナントで消費することでイオンモール全体では利益につながることでしょう。今後の計画もイオン次第ですが、最近では1日1000円前後で使える読書・コワーキングスペースの「MIRAIYA Bookmark Lounge」を併設した店舗を増やしているようです。ラウンジ・カフェを併設した書店は蔦屋書店に通じる部分があり、くまざわ書店など他の書店も同様の店舗を展開しています。

文教堂グループHD:事業再生中、規模縮小が続くか

CA文教堂 青山一丁目店

CA文教堂 青山一丁目店 ©Nagahisa_Design

 駅前や商店街に中型の店舗を多数構えていた文教堂ですが、最近ではその数も減少しました。同社は2018/8期末に債務超過に陥ったのち、事業を再生すべく不採算店舗の閉店を進めているためです。なお債務超過とは負債が資産を上回る状態を表し、理論上その会社の資産を全て売っても借金を返しきれない状態を表します。

 同社は上場廃止を免れるべく事業再生に努めてきました。2018/8期から2021/8期までの業績は次の通りです。

【文教堂グループHD(2018/8期~2021/8期)】
売上高:274億円⇒244億円⇒213億円⇒188億円
営業利益:-5.5億円⇒-5.0億円⇒4.1億円⇒3.7億円
最終利益:-5.9億円⇒-39.8億円⇒2.9億円⇒3.7億円
純資産(マイナスは債務超過):-2.3億円⇒-42.1億円⇒7.3億円⇒11.0億円

 2019/8期は不採算店舗を30店も閉店したことで減収となったうえ、撤退に伴う費用や資産評価額の見直しから赤字が拡大したことで債務超過額が拡大しました。しかし2020/8期、2021/8期にはコロナ禍で苦しみつつも不採算店を閉店し、経費削減に努めたことで黒字化に成功しています

 2020/8期には債務超過を解消していますが、これは金融機関による債務の株式化や株主である日本出版販売(現・日販グループホールディングス株式会社)から増資を受けたためです。なお日販グループHDは出版業界の問屋にあたる「取次」です。文教堂はこの債務超過解消によって上場廃止を免れることになりましたが、不採算店舗の閉店やコスト削減を続けるとしており、今後も規模縮小が続くことでしょう

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