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本屋が20年で半減。閉店相次ぐ「大手書店チェーン」の生き残り策とは

ビジネス

出版不況のなかでも売上規模を維持

 書店・ネット販売事業について注目していきましょう。2020年1期は大きな出退店もなく、売上高は微減にとどまりました。しかし2021/1期は戸田書店8店舗を取得するなど店舗数を88店から101店へと伸ばしたものの、新型コロナ感染拡大に伴う臨時休業が影響し、売上高が大幅に減少してしまいました。

 翌2022/1期もコロナ禍は続き時短営業・休業を実施しましたが感染拡大当初よりは回復しています。近年の動向をみると不採算店からの撤退や新店舗の開店によって不況ながらも規模を維持しているようです。街中の小型書店を展開しているわけではないため、大型店を通じて今後も一定の需要を維持できるでしょう。

 なお、同社は絵本に特化した店舗や高級文房具店を併設した店舗、喫茶店を内設した店舗など新たなスタイルの店舗を展開し、集客を図ろうとしています

紀伊國屋書店:海外進出を続けていく

紀伊国屋書店 新宿本店

紀伊国屋書店 新宿本店 ©picture cells

 丸善と同じく、紀伊國屋書店も都市部に店舗を置く大型書店です。公式HPによると全国に68店舗を展開するほか、学生向け店舗として大学構内に構える「ブックセンター」を83か所に置いています。紀伊國屋書店の特徴は何より海外店舗を多く抱えていることです。ニューヨークやロサンゼルスなど米国に20店舗置くほか、シンガポールには7店舗、タイには3店舗展開しています。

 その他台湾やインドネシアなどにも店舗を構えており、日本人駐在員の多い地区に進出していることが分かります。ただし、シンガポール本店では書籍の85%が英語の書籍が占めているように、完全に日本人だけを対象としているわけではありません。なおオンライン販売も実施しています。さて同社の業績ですが、非上場のため決算公告を参考にします。2018/8期から2022/8期までの業績は以下の通りです。

【紀伊国屋書店(2018/8期~2022/8期)】
売上高:1031億円⇒1,023億円⇒981億円⇒979億円
純利益:8.1億円⇒8.5億円⇒8.2億円⇒6.9億円

 業績要因に関する資料は同社から公表されていませんが、同様の店舗を構える前出、丸善CHIホールディングスを参考にすると、2020/8期、2021/8期における規模縮小は恐らくコロナ禍によるものと考えられます。紀伊國屋書店も一部店舗で休業や時短営業を実施していました。

 なお同社は今後も海外進出を続けるとしており、縮小が続く国内事業を補うに至らないまでも、海外事業の重要度は高まっていくことでしょう。国内事業も丸善と同じく都市部の大型書店を中心とするため、一定の需要は維持できると思われます

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