元男性の“トランス女性”が語る、知ることの大切さ「求められるものは違う」
「求められるものが違う」と感じた
――いわゆる“女性らしい”立ち振る舞いを求められるようになったんですね。
山本ペリ:はい。10代の時に“女性”としての教育を受けてないから、「男の人の家には行っちゃいけない」とか「こういう人とは付き合っちゃいけない」とか分からないんです。だって中高は男子校で、周りが全部男の人に囲まれて生きてきたから。
あと、男って会社へのコミット力を試されるみたいなところがあると思うんです。でも、女性になってからは「出産の予定はないの?」とか、面接の時に「彼氏いるの? 結婚の予定は?」とか、産休で休まれたら困るからという理由で聞かれました。なんか、社会的に求められてるものが違うんだな~って。
――女性になって1番良かったことってなんですか?
山本ペリ:温泉です! 温泉に入れるようになったことですね。手術して戸籍を女性にして、やっと温泉に行けるようになった時に「120万円分、元取ったな~。最高かよ!」と思いましたね。私みたいな“元男”が女性として温泉に入ることを嫌がる方もいらっしゃるとは思うんですけど……。私の場合は一応、手術して、その後、戸籍も(女性に)変えてから行きましたね。
それとトレンドの服を着られるようになったことくらいですかね。他はないです。良かったというより「やだな~」と思っていたことが解消されたって感じですかね~。
MtFの人たちにも就職して欲しい
――同じMtFの人たちに伝えたいことはありますか?
山本ペリ:……私の周りに限って言えば、昼の仕事をしている(MtFの)子が私以外あまりいないんです。ニューハーフヘルスとかショーパブで働いている子が多いです。水商売が向いてて、それでショーとかやって、めっちゃカッコいい子もいるんです。ただ、向いていないのに、仕方なく続けざるを得ない子もいます。
資格があったり、技術があったりしたら働けるじゃないですか。会社に入っちゃったら、仕事ができたら、その人がどういう性別かは本来関係ないじゃないですか。それだけなので、MtFの人たちにも、就職してって言いたいです。
手術するまでは自分の体のことでしんどかったり、いっぱいいっぱいだけど、それさえ取り除いてしまえば、そこからがスタート地点なので。望む性別で生きても、女性としての価値を結婚や恋愛に置いちゃうと、パートナーに振られた時に死にたくなったりすると思うんです。でもそれだけじゃないですよね、人生って。仕事で自己実現することに手が届かないワケじゃないと思うんですよ。