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30歳で“老舗銭湯の店長”に転身した元サラリーマンに聞く、「収入が半分」でも決断したワケ

学び

長谷川さん

銭湯好きから銭湯の中の人へ

「三代目と親交ができてから世間話などしている中で、『銭湯が好きなので、大変なことがあったら手伝いますよ』とかポロポロ言っていたんです。そしたら日曜の朝風呂の後の清掃を手伝ってくれる人を探しているということで、日曜なら暇だしと手伝うようになったんです

 銭湯の内側へと一歩足を踏み入れた長谷川さん。仕事の休みに銭湯の掃除をして大変なのではないのかと聞くと、「楽しかったんですよね」と話してくれた。

「新薬の開発って時間もかかるし、実際にその薬を使う人の顔を見れるわけではないんです。あと会社という仕組み上、仕方ない部分もあるんですが、新しいやり方を思いついても上司に止められたりしてなかなか実現できない。それに比べて、銭湯だと掃除をすると綺麗になったのが目に見えてわかるし、いろいろと自分なりに試行錯誤できる。そうして準備したお風呂に浸かりに来る人の顔が、純粋に嬉しかったし、楽しかったんです

銭湯店長への転身が現実的なものに

千代の湯

千代の湯の浴場(女湯)。タイル絵がシブい

 こうして梅の湯の清掃を手伝っていた長谷川さんはある日、梅の湯から徒歩5分ほどのところにある千代の湯のご主人が体調を崩されてしまい、女将さん一人では人手が足りなくなったことを知る。

「頻繁に通っていたわけではないのですが、行ったことはあったので『あ、あの銭湯が』と思い、千代の湯の掃除も手伝うようになりました。そのうちお湯の仕込みも手伝わせてもらえるようになったりして、しばらく仕事をしながら千代の湯の手伝いをするようになりました」

 しかし、女将さん一人での運営には限界があった千代の湯。賃貸契約の千代の湯の契約更新のタイミングが近づくなか、女将さんに言われたのは「長谷川くん、銭湯興味ないの?」の一声だった。

 ただ、さすがに長谷川さんが経営から運営まで携わるのは現実的ではない。そこで手を挙げたのが梅の湯三代目店主の栗田さんだ。「これ以上、荒川区から銭湯を無くしたくない」という思いで、賃貸契約を引き継ぐことを決断した栗田さんのおかげもあり、長谷川さんの銭湯店長への転身は現実的なものとなっていく。

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