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居酒屋チェーン・金の蔵「大ピンチからの挑戦」運営企業社長が明かす、水産業への進出

ビジネス

 かつて都心の主要駅で必ず見かけたお手軽価格でおなじみの居酒屋「きんくら酒場 金の蔵」や、一時は大手牛丼チェーンも脅かすまで規模を拡大した「東京チカラめし」は、外食業界に鮮烈な印象を残した。

東京チカラめし

東京チカラめし 新宿西口1号店

 どちらもかつての隆盛から一転して、ここ最近ではすっかり存在感が薄れつつあるが、実は運営する会社は同じ。しかも、その会社は現在水産業に進出しているという。一体何がそうさせたのか。株式会社SANKO MARKETING FOODS代表取締役社長の長澤成博氏に話を聞いた。

実はコロナ以前から苦しんでいた

――多くの飲食店に暗い影を落としたコロナの影響は、SANKO MARKETING FOODS(SANKO)にもありましたか?

長澤成博(以下、長澤):実はコロナ以前から、向かい風となる社会の変化がありました。「金の蔵」は新宿や有楽町など、山手線の内側に数百席規模の大型店中心の店舗展開をしていました。会社帰りに「みんなで飲みに行くぞ!」と大人数で来ていただくためだったんです。今から思えば古き良き時代の文化ですね(笑)。

 しかし、「働き方改革」の流れもあり連れ立ってみんなで飲みに行く「飲みニケーション」がハラスメントにもつながるという風潮の影響も受けて、売上も下がってきていました。

――そこに追い打ちとしてコロナが直撃したような形になったんですね。お店を一気に見かけなくなりましたが、どのくらい減ったんですか?

長澤:2017年6月には87店舗あった「金の蔵」ですが、2022年6月には6店舗になります。都心一等地の大型店は、家賃だけで700万円……といった店舗も多く、それが80店舗以上あると、自粛中でも毎月数億円の赤字が積み上がるような状況で大きな打撃を受けました。コロナ前から構造改革に動き出していたこともあり、一気にお店を閉める方針転換に動けたのは、他社様より早かったと思います。

新鮮な魚を冷凍せず仕入れたかった

株式会社SANKO MARKETING FOODS

長澤成博氏

――その大ピンチから、水産業に乗り出したのはなぜですか?

長澤:2020年に、もともとご縁があった静岡県沼津市の漁業協同組合の方から「魚市場の立て直しをしているので、見にきてくれないか」とお声かけいただきました。最初は「魚介類を沼津から直接買わせていただく」くらいのイメージだったんです。魚市場から、いくつかの問屋さんを介してお店に仕入れると、お店に着くまでに時間がかかってしまいます。

 しかし、自社で産地から直接購入すれば、沼津は東京から車で2時間ほどなので、今まで以上に新鮮な魚を冷凍せずに生のまま仕入れられるという狙いもありました。

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