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所持金2円の男性に役所はカップラーメン1個だけ渡した…20代起業家が見た「仕事探し」の現実

ビジネス

 内閣府が2月7日に発表した調査「日本経済2021-2022」では、25~34歳の年齢層の中で「所得格差」が広がっていることがわかった。そんな20~30代が相談者の約6割を占めていると話すのは「いえとしごと」を運営するRelight株式会社の代表取締役社長である市川加奈氏(29歳)。

いえとしごと

「いえとしごと」を運営するRelight株式会社の代表取締役社長、市川加奈氏

「いえとしごと」は、「住所や寝る場所がない」「身分証明書がない」、「所持金をほとんど持っていない」といった人に寮付きの仕事などを紹介し、再出発のサポートをおこなっている会社です。

 インタビューの前半の記事では、市川氏が2019年に26歳という若さで起業するまでの経緯のほか、相談に来る人たちがどのような過程を経ているのかを紹介しました。後半となるこの記事では、若者が家を失ういきさつ、市川氏の失敗談や心に残る話などにフォーカスを当てて紹介します。

20~30代が相談者の約6割

――「いえとしごと」に相談する人の年代別割合は、どんな感じですか?

市川加奈氏(以下、市川):20~30代が約6割で、40代が約3割、残りがほかの年代です。家族との不仲などで家を飛び出してネットカフェで生活をしているうちにお金が尽きてしまったり、ルームシェアや同棲、居候の解消などで住むところがなくなってしまったりというケースが多いです。

――家族などに連絡してほしくないという若者も多いと思いますが、どうですか? また、若年層から相談を受けているときに気をつけていることはありますか?

市川:ご家族などに居場所を知らせることもないですし、たとえ問い合わせがあっても個人情報なのでお伝えすることはありません。話は淡々と聞くようにしています。相談に来られる方も、面談という短い時間だけではすべてをさらけ出せないと思います。お互いにまだ言えないことや、わからないこともあることが大前提なので、否定したり正論を押し付けたりすることはしません。安心して相談に来ていただければと思います。

相談者の10%弱が就職して生活の立て直しを

いえとしごと

「いえとしごと」で選択可能な業種

――新型コロナ問題でも若年層の貧困がたびたび取り上げられますが、「いえとしごと」でも相談者の数は増えましたか?

市川:2019年の10月に法人登記。半年も経たないうちにコロナが流行したので比較は難しいのですが、新型コロナの感染拡大が騒がれた第1波のときには、これまでの相談平均の約1.5倍。月300人以上から相談エントリーがありました。

――現在は毎月250ぐらい相談エントリーがあるとのことですが、そのうち、どのぐらいの方たちが就職して生活の立て直しを目指している感じですか?

市川:約10%弱の20人前後と、結構少ないです。ただ、無理やり仕事に繋げるのではなく、仕事を通じて生活の立て直せそうかどうかを面談で判断しているので、この点は変えたくないと思っています。就職しなかった方の中には、他社で仕事が決まった方や生活保護などに繋がった方もいますが、その人にとってベストな解決策であれば良いかなと思います。

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