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所持金2円の男性に役所はカップラーメン1個だけ渡した…20代起業家が見た「仕事探し」の現実

ビジネス

100件電話しても話を聞いてもらえるのは…

いえとしごと

炊き出しの様子

――どのような流れで生活を立て直すことになりますか?

市川:「いえとしごと」は人材紹介として運営しているので、仕事をして生活を立て直したい方を寮付きの会社様につないでいます。受け入れてくれる会社様とは事前に話をして、携帯電話や身分証明書など、どこまでなくても大丈夫なのか聞いています。仕事をして生活を立て直したい方から連絡をもらって、LINEなどのツールを用いて面談。お互いの条件に合うような会社様につないでいます。

 こういった取材などメディアに出させてもらうようになって、会社様のほうから「受け入れ大丈夫だよ」と声をかけてくれることも多くなり、業種も増えました。規模の大きな会社様からも「受け入れますよ」と言ってくださることも結構あるんです。

 業種としては警備や介護、清掃、製造、配送などが中心。そのほか、コロナ禍ではありますが、旅館や美容室、飲食店なども増えています。

――「いえとしごと」は、メディアなどにも取り上げられて相談者も多いイメージですが、起業したときはどうでしたか?

市川:最初は、実績もないので寮付きの仕事を提供してくれる会社様をみつけるのも大変でした。テレアポで1日に100件ほど電話しても、話を聞いてもらえるのは1~3件ぐらい。結構大変でした。

40代元電気工事士との苦い失敗経験

いえとしごと

面談風景。相談者の声に耳を傾ける市川氏(左側)

――失敗したと感じたこともありますか?

市川:もちろんあります。起業してホームページを開設した初日に、どうやってヒットさせたんだろうと思うほどすぐに、40代で元電気工事士の方から相談がありました。仕事がなくなり所持金は2円、トランクルームで寝泊まりしている状況。でも当時は、まだ仕事をして生活を立て直したい方を受け入れてくれる会社様も少なく、紹介がスムーズにいかなかったのです。

 その方は、生活保護は家族に連絡がいくから困るので別の支援がないか、役所に相談しに行ったところ「今後のことをじっくり考えていきましょう」と、カップラーメン1個だけ渡されたとのことでした。でも所持金は2円なので、とにかく役所の支援を受けて無料で泊まれる施設を探すのに同行し、その方は入所。

 けれどそのあとも仕事を紹介できず1か月ぐらい経ってしまい、その方はご自分で仕事を見つけて就職しました。それなのに、「これだけ長い間お付き合いをさせたのに、違う場所で就職しちゃったから売上が入らないよね、すみません」と、こちらの心配までしてくれたんです。それがすごく申し訳なかったのと、悔しくて…。その出来事があり、すぐに会社様とつなげられるようなフロー作りに力を入れました。

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