所得格差の拡大…なぜ若者だけ?非正規労働者を取り巻く“厳しい現実”
格差を是正する2つの方法
このような格差を是正するのが、国や自治体の役割です。次に再分配所得ジニ係数を見てみましょう。青色の棒グラフが再分配所得ジニ係数です。2017年は労働所得ジニ係数が0.56ですが、0.37まで是正されています。政府の働きかけによって33.5%改善され、格差は縮小しているのです。
しかも改善割合は1990年の15.9%から確実に上昇しています。所得格差が広がったとしてもそれを是正し続けていることになります。
格差を是正する方法は大きく2つあります。1つは税金。もうひとつが社会保障です。改善への寄与度が大きいのが社会保障です。1981年はほぼ同一の値でしたが、2005年には社会保障が25%。税金は5%以下の水準まで下がっています。
ジニ係数の改善度が高いのは高齢者たち
ここまでくるとだいぶ見えてきます。ジニ係数の改善度が高い世代は、社会保障(医療や年金)の恩恵を受けている高齢者なのです。59歳までの改善度は5%程度ですが、60歳を超えると25%に跳ね上がり、70歳以上で45%を超えるピークとなります。
これは60歳を超えると年金をもらえない人、国民年金の人、厚生年金の人、退職金の有無など、引退後の所得に大きな差が生じることが背景としてあります。しかし、29歳以下の労働所得ジニ係数は0.4に近づいているにも関わらず、改善効果はほとんどありません。
その一方で同じ水準の55歳以上の世代は5%の改善効果が働いています。若年層は労働所得ジニ係数が年々高まっているにもかかわらず、再分配効果が得られていないのです。