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「女みたいな返事をするな」ジェンダー平等を妨げる職場の“SOGIハラ”実態と予防策

学び

 かつては「ホモ」をテーマに笑いを誘う人気テレビ番組がありました。時代は変わり今では「SOGIハラ(ソジハラスメント)」という言葉が生まれています。性的指向や性自認に関して相手を侮辱するハラスメントです。また、それを本人の了解を得ずに第三者に暴露することを「アウディング」と呼びます。

禁句

※画像はイメージです(以下同じ)

 今では「LGBT」という言葉の意味も広く世の中に知られるようになりました。本記事ではハラスメント専門家の筆者(村嵜要@murasaki_kaname)が、ジェンダー平等の時代に生きるみなさんに、職場でSOGIハラと呼ばれない予防策と、LGBTとして働く人たちが被害に遭った場合の対処法をお伝えします。

SOGIハラで労災認定の事例

◆「SOGI(ソジ)」とはSexual orientation(性的指向)とGender identity(性自認)のアルファベットの頭文字を指します。
◆「LGBT」とはL(レズビアン、女性同性愛者)、G(ゲイ、男性同性愛者)、B(バイセクシュアル、両性愛者)、T(トランスジェンダー、性自認が出生時の性別とは異なる人)のアルファベットの頭文字を指します。LGBTは「性的少数者の総称」として用いられることもあります。

 茨木労働基準監督署(大阪府茨木市)は性別変更した看護助手が精神疾患を発症したのは職場でSOGIハラを受けたことが原因と判断し、労災認定しました。調査書によると看護助手は男性として生まれましたが、性自認としては女性だったため、その後、性別を女性に変更。

 精神疾患を発症する前のおおむね半年間の間に職場で、男性のような名前で呼ばれたり、人格や人間性を否定するような攻撃が執拗に行われていたと判断。心理的負荷は3段階のうち最も上の「強」とされました。SOGIハラで労災認定されるのは、まだ珍しい事例とされています。

精神的苦痛を感じたメーカーの事例も

LGBT

 2020年6月から大企業に施行されたパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)では、SOGIハラ、アウディングをパワハラだと規定して、事業主が防止策を講じることを義務づけました。中小企業は2022年4月から施行されます。

 企業はSOGIハラ、アウディング、LGBTに関する内容を盛り込んだハラスメント研修を定期的に実施し、行わないよう従業員に周知しなければなりません。職場の同僚間はもちろんですが、影響力の強い管理職は特に自身の発言には気をつけながら、職場でSOGIハラ、アウディングが発生しないように、管理監督する責任があります。

 筆者が代表理事を務める日本ハラスメント協会の相談窓口にもSOGIハラの相談がありました。メーカーの事務職として働くトランスジェンダーのAさん(男性として出生、性自認は女性)の事例では「女みたいな返事をするな」「女っぽい男性が働く職場のほうが合ってるんじゃない」などと侮辱され、ある書類を上司に提出した時には「性別欄、空白ってなんだよ」とも言われ、精神的苦痛を感じたようです。

 その後、社内で行為者の上司に聞き取り調査が行われましたが、「部下をイジって距離を縮めたほうがお互い仕事がやりやすい」との言い分がありました。しかし、本人の意に反する言動で就業環境を害したため、上司の言動はSOGIハラに認定されています。

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