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習近平氏の「中国は世界的なロールモデルになる」は遠い夢。人民元は世界の基軸通貨になり得ない

ビジネス

 発足したばかりの岸田文雄新政権だが、総裁選時から中国には強気な「対抗姿勢」を打ち出してきていた。対米従属のなかで、経済成長著しい中国とどう向き合うか。

中後 天安門

※画像はイメージです(以下同じ)

 しかし、米中対立の激化を早期から提言していたエコノミスト、エミン・ユルマズ氏@yurumazu)は「習近平体制は相当行き詰まっている」と語る。習近平主席が唱えた2大構想とは? 中国の通貨・人民元は世界の基軸通貨になるのか? エミン氏が解説する(以下、著書『米中覇権戦争で加速する世界秩序の再編 日本経済復活への新シナリオ』(KADOKAWA)より一部編集のうえ、抜粋)。

「中所得国の罠」を抜け出した国

 2007年に世界銀行が提起した「Middle Income Trap(中所得国の罠)」という概念があり、これは、発展途上国が一定規模(中所得)にまで経済発展を遂げたあと成長が鈍化して、それ以上の水準に届かなくなる状態・傾向のことを意味する

 経済は1人当たりのGDPが1万ドル程度になると停滞すると言われており、1万ドルまではスムーズに上昇しても、それ以上には容易にならないというのが通説だ。

 たとえばLevy Institute の研究によれば、1950〜2000年までの124カ国を調べたところ、中間所得に辿り着いた52カ国のうち35カ国がMiddle Income Trapに陥っている。つまり、それほど1万ドルを超えるのは難しいわけで、私の母国トルコも現在、そうした状況から抜け出せないでいる。

 順調に経済が発展して、中間所得の平均が1万ドル程度になるとクルマなどが売れ始める。しかし、それ以上所得を増やすためには、付加価値の高い商品を作る必要があり、それができたのが日本、韓国、欧米諸国だった

中国は「世界の工場」を抜け出せるか

エミン・ユルマズ

エミン・ユルマズ氏

 一方、中国の場合は、これまで確かに冷戦終結後のグローバル化の恩恵を大いに受けてきたとはいえ、パンデミックの影響でグローバル化が終焉に向かう状況下、既にMiddle Income Trap に陥っている可能性が高い

 中国は「世界の工場」ではなくなりつつあり、中国の経済成長は従来、豊富な国民の労働力に支えられてきたわけで、そろそろイノベーション(革新的な取り組み)やヒューマンキャピタル(知識や技能)を活かす時期にきているのに、依然としてそれが機能していないように思える。

 中国のシリコンバレーと言われる深圳の発展は、外国の資本と技術なしでは成し遂げることは不可能だった。中国政府が外資企業の設立を許可した1981年以来、深圳に設立された外資企業の数は9万社以上である。

米中覇権戦争で加速する世界秩序の再編 日本経済復活への新シナリオ

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旧冷戦終結で低迷した日本経済は、新冷戦開始で大復活を遂げるのだ。「アメリカ is バック」の先にある「ジャパン is カムバック」のシナリオを描く!

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