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習近平氏の「中国は世界的なロールモデルになる」は遠い夢。人民元は世界の基軸通貨になり得ない

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中国は海外企業との技術提携で成長した

 さらに、OECD(経済協力開発機構)のランキングによれば、世界でもっとも教育水準が高いトップ10の国はカナダ、日本、イスラエル、韓国、英国、米国、オーストラリア、フィンランド、ノルウェーとルクセンブルクである。このランキングは25歳から64歳までの成人人口のうち大卒以上の割合で作っているが、カナダは56.71%ともっとも高く、日本は51.44%で2位である。

 中国はこの20年で大きく増えたもののまだ17%(2018年時点)に留まっていて、OECD加盟国の平均を大きく下回っている。長年、中国は海外企業と技術提携を結ぶことなどで、多くの事業を展開してきた

 しかし、海外企業のサプライチェーンの動きが加速していくにつれて、中国企業が“純性の中国製”を作ったとしても、海外でそうした製品が売れる可能性は低いだろう

 習近平が「一帯一路」という国家戦略を2013年10月に掲げてから、既に8年が経過しようとしている。周知のように「一帯」は中国からユーラシア大陸を経由してヨーロッパにつながる陸路の「シルクロード経済ベルト」のことを言い、「一路」は中国沿岸部から東南アジア、南アジア、アラビア半島、アフリカ東岸を結ぶ海路の「21世紀海上シルクロード」のことを言う。そして「一帯一路」とは、この両地域でインフラ整備、貿易促進、資金の往来を促進する広域経済圏構想のことを指す。

習近平の「中国は世界的なロールモデルになる」は遠い夢

習近平中国主席

習近平中国主席 PARIS, FRANCE – MARCH 25, 2018 : Xi Jinping at the Elysee Palace. Minister, china. ©Frédéric Legrand

 この大構想と共に、設立されたのがAIIB(アジアインフラ投資銀行)で、この両地域の発展途上国への経済基金を設定したことが大きく影響して、中国は100を超える国と地域からこの構想への支持あるいは協力を得ることになった。

 だが、2018年に起きた米中貿易戦争を契機としてトランプ前政権は「一帯一路」への批判を強め、2019年4月の「第2回一帯一路国際協力サミットフォーラム」への参加をアメリカが見送って以降、この構想に大きな進展は見られない。

 そして習近平は2020年7月に「双循環」という新たな経済構想を掲げたわけだが、まだ日が浅くこの新構想の先行きは不透明だ。

 この2大構想がどうなるか予断を許さない状況で、大きな債務問題を抱える習近平体制は相当行き詰まっていると思われる。よって中国は今後、資本統制を非常に厳しく強めるだろうし、習近平の「中国は世界的なロールモデルになる」という発言は、相当遠い夢のように思える。ただし、だからといって中国を過小評価すべきでないと考える

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