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『シン・エヴァ』を見て、ファン歴25年の私が思うこと。庵野と富野両監督の共通点も/常見陽平

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物語を通して見えた「青春時代の落とし物」

 1995年10月に放送開始のアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』から数えて、25年以上にわたり続いたエヴァンゲリオンシリーズ。完結作を見て感じたのは、ガンダムやスター・ウォーズなど他のSF作品と同じく、結局は「家族」がテーマの物語という思いだった。

 1つひとつのシーンを振り返ると、とっさにパリや田舎町のシーンとなり「なぜそこにいるのか」と考えてしまう瞬間もあった。いまだ昇華しきれていない場面もあるが、なかでも、松任谷由実の『VOYAGER~日付のない墓標』のカバーが流れるシーンからエンドロールまでの流れは、思わず20回ほどリピートしてしまった

 素直に込み上げたのは「アラフィフ男子が抱える青春時代の落とし物」が凝縮されているという感想だった。主人公・碇シンジの母親であるユイが出てきた理由や、「さようなら、全てのエヴァンゲリオン」というキャッチコピーの意味。

 今の時代からすればポリコレ的に異論もありそうだが、シンジがパイロットの一人である真希波・マリ・イラストリアスに言ったセリフの甘酢っぱさなど、さまざまな感情がわきおこってきた。

王道の作品をどう“壊してくれるか”

映画

 また、エンディングで流れる宇多田ヒカルの主題歌『Beautiful World』もふたたびアレンジされていた。正直、『:序』で初めて聴いたときはピンと来なかったものの、完結作を見て納得。ラストシーンに上手くはまっていた。

 若干のネタバレも含みつつと言ったものの、革新的なところはぼやかしながらもうひとつだけ。緊急事態宣言が明けてふたたび都道府県をまたげるようになったら、山口県にあるJR宇部線・宇部新川駅で、スマホで撮影しながら駅舎の階段を登ってみたいという思いも芽生えた

 エヴァンゲリオンシリーズを完結させた庵野監督は、総監督として次の作品をすすめている。8月20日からAmazon Primeで配信中の『庵野秀明+松本人志 対談』でも作品のワンシーンを見られたが、2021年内の公開が期待される『シン・ウルトラマン』。そして、次は『シン・仮面ライダー』の映画化も決定している。

 もちろん筆者も両作の公開を待ち望んでいる一人だ。『:Q』と『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の間で2016年7月公開の映画『シン・ゴジラ』と同じく、いずれも王道の作品をどう“壊してくれるか”は期待大で、劇中にどのような謎かけを仕込んでくるのかも非常に気になる。

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