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はあちゅう×しみけん報道でも注目。今さら聞けない「結婚の常識」

暮らし

――結婚生活について何らかの取り決めをする契約結婚については、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?

矢野:あくまでも個人的な解釈ながら、デメリットは思い付きません。一方で、公序良俗に反しない範囲であれば、法律で決められている夫婦間とは異なる権利義務関係をたがいに生み出せるのはメリットかもしれません。

 また、事実婚ならばいわゆる一緒に同居人として暮らす「同棲」との境目が曖昧な場合もありますが、婚姻関係にあることを明らかにできるというのも利点かと思われます。

妻以外の女性と添い遂げるため事実婚を相談するケースも…

シニア 夫婦

※画像はイメージです

――結婚について矢野先生のもとには多くの相談者がみえるかと思いますが、一般的にイメージされる法律婚以外、事実婚や契約結婚を相談しに来る方からは、どのような事例がありましたか?

矢野:事実婚でいえば、シニア世代の再婚者同士で、成人した子どもに迷惑をかけたくないという理由から「籍を入れたくない」という相談がありました。

 他には、夫に借金があるからといった理由や、生活保護を受給するために入籍していなかった方々、10年以上別居していた妻が離婚に応じてくれず、他の女性と事実上の夫婦生活を送っていたという重婚状態の男性もいました。

 ただ、これらはわりとネガティブな事例ばかりなのですが、婚姻制度について氏の変更などを鑑みて、独自の考えをお持ちの女性が事実婚を選択するといったポジティブなケースもあります。

――一方で、契約結婚についてはどういった事例がありましたか?

矢野:本来、法的には婚姻後における夫婦の収入は原則として共有財産となるのですが、男性から「それぞれの特有財産としたい」と相談されたこともありました。また、離婚歴のある男性からは、再婚にあたり将来もし離婚する場合には「財産を各自が取得する契約を交わしたい」と相談された事例もあります。

一方で、夫に浪費癖があった女性からは「結婚後のそれぞれの収入は、妻が一括して管理するという契約を交わしたい」とう相談があったほか、婚姻関係を結んでからの事例となりますが、浮気した夫を許す代わりに「今後、浮気相手といっさい接触しない」という制約条項と違反した場合のペナルティを契約として残したいというケースもありました。

――最後に、法的にみた結婚にまつわる注意点を教えてください。

矢野:事実婚に言及した話ですが、やはり恋人同士や同棲相手との境界線が曖昧なのは注意点かもしれません。想定されるものでいえば、例えば、夫が浮気をして妻から慰謝料を請求されたとしても、夫側が「自分たちは単なる同棲で結婚はしていない」と弁解する場合もあります。

 また、夫の手術などの場合に配偶者としてサインができない場合もあるため、いずれにせよこのような事態を考慮して、結婚契約書を取り交わしておくというのは必要です。さらに、配偶者としての相続権が認められない場合もあり、そのようなケースでは事前に遺言書を書くこともあります。

■ ■ ■ ■ ■

 男女の関係性も多種多様になりつつある昨今。はあちゅう氏としみけん氏のニュースで注目された事実婚など、結婚のさまざまな形も受け入れられつつあるようにも思えます。

 ただ、いずれにせよ互いの“約束事”を事前にしっかり結んでおくというのも、円満な結婚生活に必須なのかもしれません。

<TEXT/カネコシュウヘイ>

【矢野京介】
弁護士。大阪府立大学経済学部卒業。1999年に東京弁護士会に登録。葛西臨海ドリーム法律事務所の代表として、主に離婚問題や中小企業の法律問題に取り組む

フリーの取材記者。編集者、デザイナー。アイドルやエンタメ、サブカルが得意分野。現場主義。私立恵比寿中学、BABYMETAL、さくら学院、ハロプロ(アンジュルム、Juice=Juice、カンガル)が核。拙著『BABYMETAL追っかけ日記』(鉄人社)。Twitterは@sorao17

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