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モノが売れない時代に、売れている商品の共通点。重要なのは「感情的価値」

学び

感情の結びつきが関係を強くする

 重要なのはお客さまに「感情的価値」を提供することです。そのためには、お客さまの感情を理解する必要があり、お客さまに対する人間理解の力を高めることが重要です。

 例えば、高級アパレルで洋服を買う人は、特別感や非日常感を求めます。モラルエンゲージメントを築くにはその感情を理解する必要がありますし、入り口にガードマンが立ったり、白い手袋をした店員が丁寧に接客するといったことは、お客さまの感情を満たす施策のひとつといえます。

 一方、ファストファッションの店で買う人は手厚い接客よりも手早く買えることを求めるでしょう。このような違いを言語化して、実際のサービスに落とし込むことがモラルエンゲージメントでは重要となるのです。

 お客さまが求める感情的価値を正しく把握するためには、お客さまの気持ちを想像するだけではなく、直接聞くのが良いでしょう。「わざわざ聞かなくてもわかっている」という会社ほど、お客さまのことを「わかったつもり」になっているものなのです

 あるシステム会社の社長に「お客さまは、なぜ貴社の商品を買っているのですか」と聞いたことがあります。すると、社長は「当社は技術が高い」「クオリティが高く、エンジニアも有資格者が多い」と答えました。

なぜ「技術が高い」の回答がズレているか?

クラッシャー上司

 この答えはズレています。「お客さまがなぜ買うのか」の答えは、お客さまが主語です。しかし、社長は自分たちを主語にして返事をしています。つまり、主語が変わっていて、質問の答えになっていないのです。

 これは売り手目線がなかなか拭えない会社によくあるケースです。お客さまを主語にして考えなければ、買われている本当の理由も見えてきません。

 この会社の場合も、実際にお客さまにヒアリングしてもらったところ、この会社の経営者はその答えに驚いていました。単純に「近いから」という理由で買っているお客さまが多いことが分かったからです。社内にシステムに詳しい人が少なく、「困ったときにすぐに来てくれる」という安心感が重要だったわけです。これが感情的価値です。

 ちなみに、この会社はパンフレットに「すぐにサポートに駆けつけます」「安心してください」といった文言を書き加え、さらにお客さまを増やすことに成功しました。この件からもわかるように、感情が企業と消費者の結びつきを強くします。

 お客さまを理解し、何を求めているか把握し、感情的価値を提供することが、長期的なエンゲージメントを築く方法であり、究極のマーケティング哲学なのです。

<TEXT/ラーニングエッジ株式会社代表 清水康一朗>

ラーニングエッジ株式会社代表。静岡県浜松市出身。98年慶應義塾大学理工学部卒業後、人材業界のベンチャー企業に入社。2000年、デロイトトーマツコンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。2003年にラーニングエッジ株式会社を設立。コンサルで学んだマーケティングや顧客管理のノウハウをベースに、ビジネスセミナーポータルサイト「セミナーズ」を立ち上げ、日本でナンバーワンの登録数をもつ業界最大のサイトに成長させる

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