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『スーパーマリオ64』に1億7200万円。米オークションで破格の価値がついた理由

ビジネス

 2021年7月11日に、「ヘリテージオークションズ」によって、NINTENDO64用ゲームソフト『スーパーマリオ64』が156万ドル(約1億7200万円)で落札され、オークションでのビデオゲーム落札価格の最高記録を更新した。

スーパーマリオ64

高額出品が相次いだ(画像はeBayより)

 このオークション後に、eBayなどのオークションサイトにも多数の同じ商品が出品された。しかし、勘違いしてはいけないのは、『スーパーマリオ64』がそれほど価値のあるゲームソフトではないということだ。今回は輸入業・輸出業にも携わる筆者が、なぜ今回のオークションでこれほどまでの高額で落札されたのか解説していく。

ソフト自体が超貴重というわけではない

 箱なしのソフト単体での相場は、高くて2000円程度。状態にもよるが、箱あり並品でも1万円前後、新品未開封でも20万円前後(通常よりも値が付いたほう)といったところで、ソフト自体が超貴重というわけではないのだ

 日本では馴染みがあまりないかもしれないが、アメリカやイギリスではトレーディングカードやコミックなどをプロの鑑定士に依頼してもらい、専用のプラケースに入れて、レーティングを数字として表示するサービスがいくつも存在している。

 コミックで強いのは「CGC(Certified Guaranty Company)」、トレーディングカードなら、日本にも2018年に進出してきた「PSA(Professional Sports Authenticator)」、そしてゲームとしては、今回落札されたソフトを鑑定した「Wata Games」が強い。

 鑑定サービスを通さないだけでも、落札金額は全く違ってくる。また、プラケースに入れられてしまうと、読んだり遊んだりというそもそもの目的からは外れ、資産や骨董品として扱われることになる。そのため、高額品を扱うバイヤーや比較的富裕層のコレクターが愛用しているサービスである

奇跡的なコンディションだからこその高値

 今回落札された『スーパーマリオ64』のレーティングは、なんと「9.8A++」という奇跡的なコンディションである。これはゲームソフトとしては、常識的にありえないコンディションに価値が付いたというべきだろう。

 新品未開封は前提として、その中でも異例中の異例である。日本でもそうだが、ゲームソフトは大量生産品。10本や20本の単位でダンボールに箱詰めされ、それが各地のゲームショップや量販店に配送される。

 ダンボールに箱詰めの際にも、コーティングされているビニールに数ミリのほころびができたり、配送される際にもトラックや飛行機の揺れや他の荷物との摩擦によって、箱がへこんでしまうことが当たり前……。

 そんな数々のダメージポイントを奇跡的にすり抜けてきたソフトでしかありえないコンディションである。同じ未開封でも一生で1度、出会えるかどうかという次元の品と言っても過言ではない。そんなものが表舞台に出てきたとなれば、投資家やコレクターは、無視できないのだ。

 そもそも「ヘリテージオークションズ」というオークションサイトは一般人向けではなく、利用しているのは投資家や資産家が多いため、その土俵に上げられるだけでも価値が跳ね上がる可能性が高くなる。

「アメリカでゲームを出品すれば高く売れる!」という甘いものではない。今回の事例は、限定的な市場で、ごく一部の層が参加できるオークションで、しかも奇跡的なコンディションに価値が付いただけに過ぎないのだ。

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