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“YouTuber”の新規参入に暗雲が。プロでなければ成功が難しい理由

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 ホームビデオを撮っていると、変にテンションの上がるお調子者というのは、いつの時代にもいたものだが、ある番組がそのレベルを悪い意味で1ランクも2ランクも上げてしまった。

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 それは、2000年からMTVで放送が開始された、お笑い番組『ジャッカス』である。この『ジャッカス』という番組は、とにかくおバカで過激ないたずら動画が詰まった実験的な番組であり、その過激さゆえに世界中で話題となっていった。当時としては、全米CS放送史上最高視聴率をたたき出し、番組を観た多くの若者が真似をして大怪我を負い、社会問題にまで発展した

YouTubeの黎明期は…

 MTVはそれ以前にも、今でこそあたり前となっている、リアリティー番組の基盤も作っていて、良くも悪くも若者の文化に影響を与え続けてきた存在である。その流れからも『アメリカン・アイドル』『X-ファクター』『ブリテンズ・コッド・タレント』といった、素人を巻き込んだオーディション番組が大量に作られた。

 ドキュメンタリー監督モーガン・スパーロックが30日間マクドナルドの商品を食べ続けたらどうなるかを検証した実験的な映画『スーパーサイズ・ミー』も話題となった。

 ユーザーたちは、リアリティーに過激を求めるようになってしまったのだ。そんな欲求が高まっていた2005年に誕生したのがYouTube。YouTubeは本来、そんなテレビ番組の真似をしている素人が自己満足で動画を投稿するような場所でしかなかった。

 才能のある者はテレビに出演し、環境やチャンスに恵まれない者は、YouTubeに投稿するというのが主流。ごくまれに業界人の目に留まり、ジャスティン・ビーバーやシャリース・ペンペンコ(現:ジェイク・ザイラス)、インド映画『ガリーボーイ』のモデルになったラッパーのディヴィンとネイジー、ネットアイドルのベッキー・クルーエルなどといったスターも誕生していったが、そこにあったのは再生回数によってお金を稼ぐという考えではなく、「純粋さ」だったように思える。

今のYouTubeが昔と異なる点

YouTube

画像はイメージです

 個人趣味のホームページやブログも、今のようにアフィリエイトやSEOを意識したものではなく、ただひたすら自分の趣味、思考を垂れ流しにしているだけでしかなかった。

 近年のYouTubeと昔のYouTubeが決定的に違っているのは、増え続ける新規参入者の意識の違いである。自分自身の伝えたいことよりも、再生回数を稼ごう、稼ごうというのが前に出すぎてしまっている気がしてならない。自己表現によって見出された価値が収益に繋がるというものとは、真逆の価値観だ。

 さらに意識のズレに拍車をかけたのが、新型コロナの自粛期間の影響で急激に増えた「タレントのYouTubeデビュー」だ。

 YouTubeをきっかけにテレビやメディアに出演するというのがルートとしてあったものが、逆にテレビやメディアに出演している人、本来はYouTuberが目指す側にいたはずのプロたちがYouTubeに進出してきたのである。

 話題になっているコンテンツをひたすら持ち上げる動画、話題になっている人の切り抜き動画といった、流行りものに群がるハイエナのような独自性のないYouTuberは本人の参入によって、今後需要がなくなっていくだろう

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