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ワクチン接種予約、コールセンター現場の混乱「マニュアルを持つ手が震えた」

ビジネス

 コロナワクチン接種ペースが高齢者を中心に加速しています。東京都をはじめとする全国自治体では高齢者優先が掲げられていますが、自治体による接種の格差も生じているのが現状です。

アルバイト 電話

※イメージです

 2021年4月から東京近郊の予約コールセンターで働く近藤美波さん(仮名・27歳)はシステムトラブルによる対処や、高齢者の苦情、さらに現場の人間関係に当惑したそうです。コールセンターでは何が起こっているのでしょう。

コールセンターで大混乱

 美波さんが働くコールセンターでは、自治体から委託されて75歳以上のワクチン接種の電話予約を受け付けていました。4月某日の朝8時半から電話とウェブ予約が一斉に開始。ところがアクセスが集中したため、両方の回線がパンク。電話もウェブもつながらない大混乱が起こったのです。

「ウェブ予約が復旧したのは午後5時半頃。コールセンターの予約が午後6時で終了してしまうため、あっという間にウェブ予約が満席に達しました。当然ながら翌日、みなさんから苦情が殺到。パソコンやスマホを使えない高齢者たちは『不公平だ』『電話が繋がらない』と怒り心頭でした

 なかには「抽選にしてほしかった」「行政が予約を入れて、都合の悪い人だけが別の日にすればいい」などと、美波さんには対処しようがない内容も多かったそうです。近藤さんは「貴重なご意見は履歴に残します」とマニュアル通りの対応をしますが、なかには「責任者を呼べ」と怒鳴る高齢者も少なくなかったとか。

一番困ったのは、次の予約開始日がまだわからない頃に、インターネット環境のない高齢者の方から『いつ予約できるのか』という問い合わせがあったこと。スケジュールは自治体の広報誌にも掲載される予定でしたが、あくまでも現時点の予定と伝えると不満はさらにピークに達しました」

高齢者からの一言に心揺さぶられる

ワクチン接種

予約コールセンターで働く近藤さん

 その後、美波さんが働くコールセンターは、集団接種だけでなく、個別接種(地元の病院やクリニック)の予約も受け付けるようになったそうです。

「2度目の予約開始日である5月某日は、当日のうちに予約枠が終了。後日かかってきた電話では個別接種の受付も行っていましたが、私たちコールセンターのスタッフが率先して近くのクリニックを探して予約するのは禁止。かかりつけ医のクリニックで接種する、あるいはかかりつけ医の先生から紹介されたクリニックが承諾した場合のみ、私たちが予約を入れてあげることができたのです」

 ただあるとき、80歳以上の高齢者の方が電話で「せっかく通じたのに予約ができないの?」と一言。美波さんは可哀そうになり、つい近くにいたSV(スーパーバイザー。オペレーターの管理者のこと)に相談したそうです。

「その方は穏やかで優しい性格なので、高齢者の気持ちに寄り添って『本当はやってはいけないけど、僕が承諾したと履歴に残していいよ』と言ってくれました。本当に助かりました」

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