過労死する働き方はなぜ減らない?「ソニー過労死問題」で考える身の守り方 | bizSPA!フレッシュ

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過労死する働き方はなぜ減らない?「ソニー過労死問題」で考える身の守り方

ビジネス

 2021年2月26日、大手電機メーカー「ソニー」で働いていた45歳男性社員の突然死を、長時間労働が原因で起きた過労死と判断し、三田労働基準監督署が労災認定した。日本人の1日の労働時間は、世界でも1、2位を争うほど長く、有給取得率も驚くほど低い。労働に関する問題の発生も決して少なくない。

弁護士

八王子合同法律事務所・白神優理子弁護士

 ソニー元社員の代理人を務めた八王子合同法律事務所・白神優理子弁護士@yuriko_shiraga)に、インタビュー前編では、過労死認定されるまでの苦労を聞いたが、後編では日本の労働法の問題点、ビジネスパーソンが自身の健康を維持しながら働くために最低限知っておくべきことについて話を聞いた。

労働の仕組みに関する問題と改善点

――そもそも日本の労働時間や働き方の問題点はどこにあるのでしょう?

白神優理子(以下、白神):「36(サブロク)協定の上限100時間未満」「労働基準監督官の人数と権限」「労働に関する啓発・教育」について、特に改善するべきだと考えます。

「36協定」(※1)に関しては、繁忙期であれば月の残業時間100時間未満まで働かせて良いという内容になっているんですね。いわゆる「働き方改革」によって法律が変わり、「これまでは“青天井”だった残業時間にやっと罰則付きで“上限”がついた!」と評価する声もありますが、これは労働問題専門の弁護士からすると、過労死する働き方に国がお墨付きを与えてしまったと言っても過言ではありません。

 国(厚生労働省)の基準では、残業が月45時間を超えたら体を壊してもおかしくない、残業が月80時間を超えたら過労死してもおかしくないと言っているのです。ここは、法律的にも罰則付きでしっかりと上限を定めるという形でしてもらいたいです。

※1…正式には「時間外労働・休日労働に関する協定届」。労働基準法36条に基づき、法定労働時間(1日8時間・1週間で40時間)を超えて労働(残業)することを労使間で認める協定。

問題があっても是正指導(勧告)をするだけ

職場 ブラック

※イメージです

――労働基準監督官に関してはどんな改善が必要と考えていますか?

白神:実は、日本は労働基準監督官の人数が国際基準からかけ離れて少なく(※2)、その権限も強くないのです。人数が少なすぎるせいで、いくら違法な働かせ方をしている会社があると伝えられてもすべて監督できませんし、実際に会社を確認しに向かって違法なことがあっても、是正指導(勧告)をするだけで強制力はないと。

 事件を送致するという警察的な役割は与えられているものの、起訴されることはほとんどないんですね。こうした点から、監督官を国際基準にまで増やすこと(※3)、そして監督官に罰則や違反業者の公表などを含めた監督権限を付与することが必要だと思います。

※2…厚生労働省公表の「平成30年度 労働基準監督年報」によると、全国の労働基準監督官数は2,991人。ILO(国際労働機関)では、同年の日本の労働者1万人にあたる労働基準監督官の割合は0.4人と公表されている。ちなみに同年他国の割合は、ドイツ1.4人、フィンランド1.2人、オーストラリア0.8人、韓国0.7人。

※3…国際基準は、労働者1万人に対して1人を上回るのが望ましいとされている。

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