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コロナと闘う看護師が告白「割に合わない」現状。ボーナス15万円減を提示されたことも

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 コロナ下で医療従事者への負担は格段に大きくなっている。2020年7月に報じられた「東京女子医大の看護師、400人退職希望」のニュースだ。原因は経営陣から“夏季ボーナス不支給“という提示があったこと。結果、ボーナス支給に転じたことで大量退職は回避されたが、他の病院でもコロナ禍において給与、補償面で不満や不安を抱える看護師は少なくない。

看護師

都内病院勤務の30代・女性看護師Sさん

 都内の病院で働く30代の女性看護師・Sさんも給与・補償面に不安を抱える1人だ。今回は彼女に、コロナ下における給与や補償面に関する話を聞いた。

昨年夏、ボーナスの提示が大幅減で騒ぎに

 Sさん自身が働く病院での給与やボーナスの変化についてこう語る。

「給与の減額はありませんでしたね。東京都からも1度だけ『新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金(※1)』が支払われました。ただ、2020年の夏のボーナスの金額は減額しました。6月に前期のボーナスの割合が提示されたんですが、初回の提示では普段もらえる額から15万円くらい減額されていたんです」

 ただでさえ多忙を極めるなか、15万円減……。当然、トラブルにも発展したそうで、「聞いたところによると、提示後に病院の労働組合が抗議をしたそうです」と語った。

「ちょうど東京女子医大のニュースが話題になっていたのもあって『このままだと、退職希望者がでてしまいます』と言ったみたいで。ただ一度の話し合いでは結論は出ず、何度か話し合いの場が設けられたみたいです。

 その間に、労働組合からアンケートも届きました。それには『病院の福利厚生に関するご意見をください』と書かれていて、人によっては『いままで通りの額がもらえないなら退職を考える』と書いた人もいたと聞きます。そのおかげもあってか、いつもよりも2万~3万円少ない額で済みました。今年の夏のボーナスがどうなるかはまだわかりませんが……」

※1:新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金……新型コロナウイルス感染症に対する医療提供に関して、都道府県から役割を設定された医療機関等に勤務し患者と接する医療従事者や職員に対する慰労金のこと。金額は勤めている医療機関や職種によって異なる

“割に合わない”と感じる労働環境

病院

※イメージです(以下同じ)

 コロナ禍でも給料の減額がなかったのは、現状良かった点とも思えるが、Sさん本人は「いえ、コロナ禍になってから仕事量がかなり増えているので、そうとも言えません」という。

「これはあくまで私の実感ですが、そもそもずっと『看護師の給与は業務量に対して割に合ってないな』と思っていました。そんな中で、新型コロナウイルス蔓延による医療逼迫。余計に割に合わないなと感じています」

 具体的には、どのような点が割に合わないと感じるのだろうか。

『病床管理(※2)』の混乱によって仕事が増えて、いまの給与は割に合わないと感じますね。私が働く病院には、もともと夜間の緊急入院を受け入れる病棟がありました。この病棟があるおかげで、他科の夜勤の看護師は、緊急入院の患者を自身の病棟で受け入れる心配をせずに済んでいたんです。でもコロナ禍で、そこがコロナ患者専用の病棟に変わったので、夜間の緊急入院でも直接、各病棟で患者を受け入れざるを得なくなりました。

 看護師の人数が少ない夜勤の時間に新規の緊急入院患者を受け入れれば、本来やるはずだった業務は滞ります。私も実際に、夜勤の緊急入院患者を含めて最大18人の患者を受け持ちました。今まではどんなに多くても16人が最大で、頻度も少なかったです。なので、18人受け持つとわかった日はとても大変でしたし、頭は真っ白になりました。そういう日はどんなに頑張っても仕事は遅れがちになりますし、勤務が終わるころには心身ともに疲れ果てます」

※2:病床管理……ベッドコントロールとも呼ばれる。病床管理を適切におこなうことで、病院経営を支えるだけでなく病状(高度急性期、急性期、回復期、慢性期などのステージ)に応じた適切な医療提供が可能になる

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