LINE記録などから「ソニー駐在員の突然死」を労災認定。背景を弁護士に聞く
「自殺・自死」の場合は、内容の証明も必要
――「脳・心臓疾患」の労災認定には、労働時間が基準となる一方、精神疾患による「自殺・自死」では、何が労災認定の基準になりますか?
白神:精神疾患による「自殺・自死」のケースでは、労働時間以外に仕事上で強い心理的負荷(ストレス)を与えられたことの証明が必要となります。つまり、直前の期間で月の時間外労働時間が100時間近くあったとしても、それだけでは不十分なんです。
――具体的にどのような内容が証拠になるのでしょうか?
白神:厚生労働省が公表している「業務による心理的負荷評価表」によると「会社の経営に影響するなどの重大な仕事上のミスをした」「達成困難なノルマが課された」「仕事内容や仕事量の大きな変化」「嫌がらせ・いじめ又は暴行を受けた」などがリストとして挙げられています。精神疾患における労災認定の場合は、このような具体的な出来事も証拠として必要です。
――労働時間の記録と違って、心理的負荷の内容を証拠として残すのは難しいように感じます。何か良い方法はありますか?
白神:記録を残すという点でいえば、LINEなどの電磁的記録に書き留めておくのがおすすめです。例えば、パワハラを受けていたり、非常に長時間労働を強いられていたりする方々は、LINEに「今日は上司にこんなこと言われた」とか「仕事上でこんな失敗をしてしまった」あるいは「今日は朝10時から午前2時まで働かされた」などの内容を具体的に残しておきましょう。
最近はペン型の録音機器も販売されているので、それを活用するのも良いです。私は学生の前で労働に関してお話をする際、必ず「いつでも録音できるように忍ばせておきましょう」と伝えていますね。
<取材・文/トヤカン 撮影/詠祐真>
【白神優理子】
八王子合同法律事務所。中央大学法科大学院卒。労働・過労死事件・行政事件など多数担当。労働・憲法の講演で全国を回る。著書『弁護士白神優理子が語る日本国憲法は希望』『学校と教師を壊す「働き方改革」』がある
Twitter:@yuriko_shiraga