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もう顔と名前を忘れない。記憶力を伸ばすコツを“記憶術の開発者”が伝授

学び

 こんにちは、記憶術講師の吉野邦昭です。デキるビジネスマンは、さまざまなことをしっかり記憶し、効果的に思い出すことができます。このような人とあなたは、脳の構造が違うのでしょうか?

考える

※イメージです(以下同じ)

 いえ、必ずしもそうではありません。あなたが脳の使い方を知らないだけなのです。記憶力が向上する脳の使い方を知り、その応用として「顔と名前の覚え方」をマスターして、デキるビジネスマンの仲間入りをしましょう!

脳が記憶しやすくなる3つの特徴

 記憶というものは、脳のいろいろな部位が役割分担し、その総合力で情報が記憶されます。ですから、各部位の強みや弱み、部位間の連携のメカニズムを把握し活用することで、記憶力を飛躍的に向上させることができます。その中でも、少し意識するだけで実践でき、かつ、効果が高い「分解」「集中」「反復」について解説しましょう。

【分解】
1)分解すると、脳は動き出す
「掃除をしなくちゃいけないけど、なんかやる気が出ない……」そんなときに、ほんの一部分だけ……例えば机の上だけ片づけようとスタートすると、なんだか調子が出てきて、結局、部屋全体を掃除できたというような経験はありませんか?

 脳は「なんとなく」「ぼや―っと」把握しているときは動きが悪いのです。記憶においても、「とにかく覚える」「とりあえず全部覚えたい」と思っているときは、脳は動き出しません。

2)本当に全部覚えなければならないか?
 資格試験対策の勉強で例を挙げてみましょう。建築基準法に関して、次のような問題があります。
<Q:建築基準法に関する次の記述は正しいか。○か×で答えよ。>

 高さ30メートルの建築物には、原則として非常用の昇降機(エレベーター)を設けなければならない。

 この問題に答えるには、次のような条文を知っている必要があります。「高さ31mをこえる建築物(政令で定めるものを除く)には、非常用の昇降機を設けなければならない」(建築基準法 第34条第二項)。

 しかし、この62文字の条文を“丸暗記“する必要はなく、理解してキーワードだけ覚えれば良いのです。この条文の場合は、「非常用昇降機 31m以上」という11文字だけ覚えれば良いのです。このように、“分解して覚えるべき部分だけを抽出”することで、脳の負荷を減らしてやるのです。

【集中】
 脳は、並行処理が苦手ですから、「1つのことに集中する」と意識することが大切です。物忘れをするときというのは、往々にして何かの“ながら”をしているときです。

・メールの返信をしながら、部下の報告を聞いている
・SNSでやり取りしながら、いつもと違う場所に鍵を置く

 一番簡単で確実な集中する方法は、“目を向けること”です。部下の報告を聞くときは、部下の目を見る。鍵を置くときに、スマホから目をはずして鍵を置く瞬間を見届ける。たったこれだけのことで、忘れる頻度が激減したという人が続出しています。

【反復】
 脳は、何度も反復された情報は重要なものだと判断し、長期に記憶しようとします。また、一度は記憶された情報でも次第に忘れていくため、定期的に反復して覚え直すことが必要なのです。記憶術を使うことで覚えやすくなり、また、忘れにくくなるので、反復回数を減らすことが可能です。しかし、“1回で一生覚えている”というわけにはいかず、ある程度の反復は必要となります。

脳の特性を押さえて、短時間で記憶力を高める

吉野邦昭

吉野邦昭氏

 頭の良いと言われる人たちは、実は、脳の特性を良く知っていて、効率的に使っているのです。もちろん、記憶についてもさまざまな“脳を使うコツ”があるのです。

【イメージする】
 脳は、イメージできると飛躍的に活性化すると聞いたことがあるでしょうか。この“イメージ”という言葉には、大きく分けて2つの意味があります。

<① 五感で感じるもの、五感を思い出すもの>
・心に思い浮かべる像や情景
・心像・形象
・心の中に思い描くこと

<② ニュアンス、雰囲気>
・ある物事についていだく全体的な感じ
・印象

 ここで、脳トレの分野でイメージという言葉を使うときは、①の五感……特に、視覚情報を言います。

 ですから、子供の頃の記憶……例えば「修学旅行はどこに行きましたか?」と聞かれると、「京都」という“言葉”ではなく、清水寺や東寺の五重塔といった“視覚情報”が思い出されるのです。すなわち、長期にしっかり記憶しようというときは、言葉ではなくイメージ(視覚情報)で覚えることがコツなのです。

【「思い出す」を繰り返す】
 中学1年生の頃、英単語を覚えようとして、「apple、リンゴ。apple、リンゴ……」と何度も覚えることを繰り返したことがありますか? 実はこれ、とても非効率なのです。記憶は、記銘→保持→想起→忘却というプロセスをたどっていきます。記銘は覚えること、保持は覚えている状態、想起は思い出すこと、そして忘却で忘れていくのです。

 ここで、実は記憶というものは「想起するときに深く記憶される」のです。

「apple、リンゴ。apple、リン……」と繰り返すのは、記銘を繰り返しているのです。そうではなく、記銘した後に適度な時間を空けて「appleって何だったっけ? あ、リンゴだ!」と想起=思い出すと、トータルで掛ける時間を少なく効率的に覚えることができるのです。

 この、想起のタイミングは、忘れ切る前、ちょっと忘れかけというところがベストです。

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