“戦力外Jリーガー”が売上370億円企業の経営者になれた理由「前向きな撤退だった」
父は常に「お前らはすごい」と言ってくれた
――現時点で、お父さんから何かを認められた経験はありますか?
嵜本:父親は多くのコミュニケーションが“承認”で、とにかく「お前らはすごい」としか僕ら兄弟に言わないんですよ。家業を手伝っていたときも、父親がやり続けていた電化製品や家具のリユースに対して、兄弟そろって「伸びしろがなくなってきたから、ブランド品の時計やジュエリーを扱うべきだ」と反対したときも、粘り強く説得したら「分かった」とうなずいてくれて。それが、「なんぼや」をスタートするきっかけだったのですが、のちに「こんなに儲かるのか」と喜んでくれました。
――お父さんはもともと商才のある人だったんですか?
嵜本:そうですね。でも、父親は相当な苦労人でもあって。昔から商売上手で営業職についても成績がナンバーワン、飲食店を手がけていたときも地域一番の店にするほど商才があったのですが、実は、親族の兄が抱えていた数千万円の借金を肩代わりするために、自分の店を何度も畳んでいるんです。
ただ、父親が40代でリユース事業を手がけるようになったのも、その兄の助言があったからで、常に「兄貴に感謝している」と言っていたんです。本当、それを聞いたらすごいと思わざるをえないです。
とにかく選択肢の精度をあげてみる
――お父さんや兄弟にも支えられながら、現在では、売上高377億円を誇る企業・バリュエンスホールディングスの経営者として活躍しています。その経験をふまえて、日常で新しい一歩を踏み出せない若手ビジネスマンへのアドバイスはありますか?
嵜本:やりたいことが見つからない人は、世の中に多いですよね。おそらく、そういった人たちに共通しているのは、選択肢を持っていないことだと思います。夢中になれることがないと相談されることもありますが、それも似ていますよね。チャレンジしなさ過ぎて、何が正しいかも分からなければ、自分が何者であるのかも分からずに迷ってしまっているはずです。
だから、まずは自分自身と向き合うのが大切。自分とはどんな人間で、何に対して一番の楽しみや喜びを感じるのか。例えば、面白いと思うものを書き出していくだけでも、輪郭はきっと見えてくるはずです。自分の中にある軸や価値観にもとづいた楽しみに手を伸ばして、極論をいえばそのプロセスは逆でもよくて、とにかく選択肢の精度を上げられれば人生も楽しくなってくるはずです。