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“戦力外Jリーガー”が売上370億円企業の経営者になれた理由「前向きな撤退だった」

ビジネス

自分を客観視して“商材”として考えた

――どこか自分を客観視しているというわけですね。

嵜本:僕は、親父が商売人だったので、自分を商材として見たときにサッカー界というマーケットで通用しているかどうかを考えられたのもあると思います。企業でもよく“サンクコスト”という言葉が使われて、いわゆる投資対効果を考える機会があるのですが、それにも通じています。

――と、言うと?

嵜本:例えば、3億円を投資した事業に対して「やったからには回収しないと」という考えに陥ってしまうと、赤字であってもやり続けることになりかねない。アスリートの場合は、お金ではなく時間が主な投資になりますが、そもそもがプロになれる確率も1〜2%で、その中でもスタメンに選ばれるのが1〜2%と厳しい世界で戦っている。本来、成功確率が限りなく低い場所で生きていたんだと、今は考えるようになりました。

サッカーを辞め、家業を手伝うように

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――サッカー選手を辞めたあとは、お父さんの家業であったリユースショップを手伝うようになったと。その選択肢は、自分にとって前向きだったのでしょうか?

嵜本:前向きでした。ただ、当時から現在のような事業家になろうという意思があったわけではなかったです。サッカーしかやってこなかった自分にとっては、ゼロからの修行のような感覚で。不安もありましたけど、不思議なことに「やっていける」と根拠のない自信は持っていましたね。

 実際、父親の会社へ入社してから数週間で、リサイクルやリユースというビジネスの面白さにも気が付きました。僕、幼い頃から友だちとの鬼ごっこでも、自主的に新たなルールを作り出すのが好きだったんですよ。何かへ取り組むときに、工夫しながら楽しむ感覚を元から持っていたので、それはビジネスに携わるようになってからも同じでした。

 父親の仕事を手伝ううちに「3000円で買った冷蔵庫を磨いて、欲しい人に買ってもらえれば1万2800円に変わるんだ」と、とある人には不要なモノが、別の人には必要なモノになるリユースの面白さを見出だせるようになって。サッカー以上にのめり込んでいき、それ以降は、一度も仕事を辞めようと思ったことがありません。

戦力外Jリーガー 経営で勝ちにいく

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