東京五輪中止の損失は4.5兆円。それでも「日本経済への影響は大きくない」と言える理由
インバウンドを見込んだ企業が立つ苦境
日本政府観光局の発表によると、2019年の訪日外客数は3188万人で、統計を取り始めた1964年以降の最多を記録。しかし、コロナウイルス感染の結果として2020年の訪日外客数は411万人と絶望的とも言える落ち込みとなっている。
株式会社東京商工リサーチが発表している「新型コロナウイルス関連破たん」調査では、森氏があげた「ホテル・旅館業」と「飲食業」はそれぞれ67件、179件と、多くの企業が倒産している(2月18日発表時点)。同調査は負債1000万円以上を対象としているため、もっと多くの企業が苦境に陥っていることは容易に想像できる。
「特にインバウンド向けのホテルやホステルなどでは東京五輪に向けて大型の開発をしてきた不動産会社が多数あり、ホテルの売却も増加しています」(森氏)
日本経済全体への影響は意外にも…
とはいえ、ホテル・旅館業や飲食業のようにオリンピック中止で大きなダメージを受ける業種はあるものの、全体的な影響として見るとそこまで大きくはないと森氏は言及する。
「関西大学の宮本勝浩名誉教授の調査によると、オリンピックが中止された場合の経済損失は4.5兆円程度となっており、GDPに占める割合はわずか1%程度です」
なお、2020年に10万円が一律に給付された「特別定額給付金」で組まれた予算が12兆8803億円となっている。金額が大きく、単純な比較も難しいが、オリンピック中止で予測される経済損失をイメージできるのではないだろうか。
事実、宮本名誉教授も「新型コロナが沈静化して、東京オリンピック・パラリンピックが通常通りに開催されることが最も望ましいことではあるが、一定の制約の中で開催されることが、日本のみならず世界にとって次善の施策であると考えられる」(関西大学「KU EXPRESS」No.39)と述べている。