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東京電力HDはどんな会社?原発事故から黒字転換、社員の平均年収は

ビジネス

業績:3.11の影響も近年は黒字転換

 つづいて、東電の決算推移を確認します。売上は5~7兆円の範囲で推移。特筆すべきは2011年3月期に最終赤字になり、2012年3月期・2013年3月期は営業赤字となっている点です。

東京電力

図:東京電力HDの決算推移(決算短信より筆者作成)

 決算短信の記載を時系列で整理すると、

【2011年3月期の最終赤字】
東北地方太平洋沖地震により被災した資産の復旧等に要する費用または損失
【2012年3月期の営業赤字】
節電・生産活動の落ち込みにより電力販売量が減少し、原子力発電を減少したことによる燃料費の上昇
【2013年3月期の営業赤字】
原子力発電を減少・為替レートの円安化による燃料費の上昇

 となっており、東日本大震災3.11による原発事故の影響が大きいと考えられます。しかし、2014年3月期以降は営業黒字となり、2020年3月期も同様の状況です。2012年3月期以降、どのように営業黒字転換を果たしたのでしょうか

社内カンパニー制から持株会社体制に

東京電力

図:3.11以降の営業利益推移(決算短信より筆者作成)

 黒字転換までのセグメント別推移を見ていきます。まず、2012年3月期・2013年3月期には電力安定供給に必要不可欠な事業以外は「その他」にまとめられました。電気事業の赤字については、先述の通り、電力販売量の減少や、電子力発電からの切り替えによる燃料費の上昇が主因と考えられます。

 続いて、2014年3月期から社内カンパニー制が導入され、それぞれ大まかに、フュエル&パワー(火力発電による電力販売・燃料調達など)、パワーグリッド(送電・変電・配電による電力供給、水力発電による電力販売など)、カスタマーサービス(お客様サービスの提供など)、コーポレート社(経営サポート・原子力発電など)のような分類になっています。

 上記をみると、「コーポレート」セグメントに原子力発電が割り当てられていることがわかります。コーポレートのみが営業赤字になるのも必然と言えそうです。燃料費の上昇の影響を受けるであろう「フュエル&パワー」セグメントも黒字になっています。

 さらに2016年3月期には持株会社制に移行したことから、

【ホールディングス(旧称コーポレート)】
経営サポート・原子力発電など
【フュエル&パワー】
火力発電による電力販売・燃料調達など
【パワーグリッド】
送電・変電・配電による電力供給、水力発電による電力販売など
【エナジーパートナー(旧称カスタマーサービス)】:お客様サービスの提供など

 とセグメント名称変更が行われています。東電のセグメント構成は比較的安定していてわかりやすく、構成変更の理由も追いかけやすい状態でした。コーポレートセグメントの赤字については、2017年3月期でいったん収束し、2018年3月期以降は全セグメントが黒字となっています

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