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コロナ下の住まい選び、注目は「和光・立川・西大井」SUUMO副編集長に聞く

暮らし

渋谷周辺の街も新たに注目されるように

 また、これから人気が出そうな街について笠松氏に聞くと「閲覧数が急上昇した街ランキング 2020」で10位に入った渋谷を挙げる。渋谷ストリームを筆頭に、渋谷フクラス、渋谷スクランブルスクエアなど大型商業施設が次々と開業し、すでに知名度で言えばトップクラスだが、駅近辺の街にも住みたいというニーズが高まっているのだという。

「2020年は宮下公園をリニューアルした新しい商業施設『MIYASHITA PARK』が大変注目を浴び、渋谷横丁やレストラン、屋上の芝生公園など連日人手で賑わう状況になっています。閲覧数ランキング4位、5位には代官山と祐天寺もランクインしていて、“渋谷圏”の街にも注目が集まっている。最近はどこでも借りられ返却可能な『シェアサイクル』の利用拡大が見られ、渋谷まで自転車に乗って行ける街が、より多くの検索数を集めるようになってきたと感じています」

 どうしても家賃相場が高くなるのがネックだが、渋谷はITベンチャー企業が数多く集積しており、なかには周辺に住むと家賃補助をしてくれる企業もある。他方、昨今の若者は物を多く持たなくなってきており、着なくなった洋服はフリマアプリで売ったりレンタルスペースに預けたりと、「コンパクトな部屋で質素な生活でも十分暮らしていけるようになっている」と笠松氏は説明する。

「シェアサイクル、カーシェアなど物を所有しないシェアリングエコノミーが台頭したことや家賃を抑えられるシェアハウス物件の一般化などの要因が考えられますが、渋谷圏の街に住むこと自体のハードルは下がってきているのかもしれません」

「2拠点生活(デュアルライフ)」が一般的に?

スーモ

 最後に、今後コロナ禍のニューノーマル時代における新たな住まいの意識はどう変わっていくかについては「多様な視点で住む街を選ぶようになり、職場に縛られない『街選びの自由化』が進む」とし、こう説明する。

「コロナ禍で在宅勤務導入が進みましたが、テレワークする際の住まい選びとして『駅近』よりも『部屋数』を求める方が増えてきましたね。SUUMOの調査では、2拠点生活(デュアルライフ)の意向者が2018年比の2倍になりました

 テレワークにより住む場所や働く場所の選択肢が広がるとともに、時間の使い方も自由度が増し、自分のやりたい暮らしを実現するために、多様性が求められてきています。働き方と住まい・暮らし方を丸ごと自分軸でデザインしなおす『クラシゴト改革』がニューノーマル時代のキーワードになると捉えています。

 家を買ったり借りたりして実現する2拠点居住だけでなく、最近では空き家や多拠点シェアハウスなどのサービスを活用することで、若い世代の方でもデュアルライフを楽しめるようになった。『アドレスホッパー』という暮らし方は、以前は特殊な技能を持った一部の方だけだったものが、今後は複数の拠点を自由に行き来して仕事やプライベートを楽しむ生き方としてより一般化していくかもしれません

 オフィスなどの場所に縛られず、どこでも仕事をこなすノマドライフやデュアルライフは、ほんの数年前までクリエイターやフリーランスなど一部の人だけが行えるライフスタイルだった。しかし、ワーケーションやテレワークなど働き方の多様化に伴い、そのハードルもだいぶ下がってきている。2021年は、コロナ禍で見えてきた自分が大事にしたい暮らしや価値観の変容を軸に街選びや暮らし方そのものを変容させる人さらに増えるかもしれない。

<取材・文・撮影/古田島大介>

1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

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