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「自分が本当にやりたいことがわからない」そんな悩みへの回答

コラム

息苦しさの原因は自由だから?

 つまり私たちは、これほどに自由だからこそ人生の大きな選択も日常の小さな選択にも迷ってしまうし、その責任も生じているのだと考えました。

 というのも、サルトルが生きた20世紀のフランスは、第二次世界大戦を勝利に収め自由を手にしたと思われたにもかかわらず、人種差別による虐殺や食糧不足などの戦争の惨禍が明るみになり、未来に希望が持てない不安な雰囲気に満ちていたと言われています。

 だからこそ彼は、こうした環境における人々に生きる指標を与えようと尽力しました。そしていま現代の世界では、当時の状況に比べてその自由度はさらに増していると考えられます。このため、その自由さと比例して私たちが負う責任も増していることでしょう

 だからこそ、私たちは何気なく人生を生きているだけであっても、本当の自分の在り方・生き方に迷いが生じてしまうときが来てしまうと考えることができます。

あらかじめ天命が決められた人間はいない

哲学

 ではどうすれば、この迷いを払拭することができるのでしょうか。さらに続けて彼はこんな示唆的なことを提示しています。

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<実存主義者は反対に、人間に於ては−そして人間に於てのみ−実存は本質に先行する、と考える。これの意味する所は単に、人間はまず存在するのであり、そうして後はじめてあれかこれかである、ということに他ならない。一言で言えば人間は自分自身の本質を自分で作り出さなければならない。世界の中に身を投じ、世界の中で苦しみ、戦いながら、人間は少しずつ自分を定義するのである>(同上)
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 ここでサルトルは、私たち人間の本質は存在に先立ってあるものではなく、存在して定めていくものであるということを説きます。つまり私たちの本来的な生きる意味や生き方といったものは、与えられるものでもなく、あらかじめ決まって生まれてくるものでもなく、自分で決めて作り出していくものであると。

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