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「コロナで生と死が希薄に」坊主バー店主が語る、悩みとの向き合い方

暮らし

 中野に「坊主バー」というお店があります。その名の通り現役僧侶がマスターとして訪れる人に酒類等を提供するお店です。そこに訪れるお客さんの多くが悩みを抱えていて、中野・坊主バーのマスター釈源光さん(浄土真宗)は、これまでに数え切れないほどの悩みと向き合ってきました。

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中野・坊主バーのマスター釈源光さん

「悩み相談のスペシャリスト」である釈源光さんに、前回のインタビューでは坊主バー開業の経緯を聞きましたが、インタビュー後編ではコロナ禍における悩みの変化、また悩みとの上手な付き合い方について、お聞きしました。

コロナで増えた仕事の悩み相談

――釈源光さんはこれまでに多くの方の悩みに寄り添って来たかと思います。新型コロナウイルスの影響によって、寄せられる悩みに変化はありましたか。

釈源光(以下、源光):仕事の悩みが多くなりました。これまでは男女関係の悩みが全体の6~7割を占めていました。今では半分くらいが仕事の悩みとなっています。

 大枠で言うと人間関係の悩みが多いです。「上司のパワハラ」「同僚と上手くいかない」「部下を制御できない」などです。普段であれば給料が安いなどが悩みになりますが、今はそんなこと言っている場合じゃないですからね。

――コロナの影響による雇い止めなども増えているなかで、たとえ苦しい職場であっても、簡単にはやめられないということですね。

源光:もちろん今の仕事を辞めたいという悩みを相談する人もいますよ。辞めたいけれど、次の仕事が見つかるか不安だ、でも今の職場にずっといたら心の病気になってしまうと悩みを話す人もいます。

悩むことはネガティブなことではない

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インタビューは坊主バー(中野)にて行われた

源光:そんなとき、まず私はこう伝えるようにしています。「私は職業安定所(ハローワーク)の人間ではないので、その人の適材適所を判断して、より良い仕事に斡旋するということはできない」と。

 宗教者の仕事は、人に気づきを与えることです。悩み相談全般で、このことが重要になります。そのうえで、その人自身にあったアドバイスをしするのです。

 もちろん、なかには「悩みの全てから解放される」ような、ある種の救済を求める人もいますし、実際に宗教で救われたという人もいます。何かしらの宗教の信者となって、その教祖様を見て涙を流している場合に、その人の心の中で起こった劇的な変化は誰にも否定できませんからね。

 ただ、宗教にそういった側面もある上で、私が坊主バーで悩み相談を受けてお話するひとつとして「悩むことは素晴らしい」ということがあります。

――悩むことは悪いことではないということですか。

源光:仏教の開祖であるお釈迦様は多分世界で一番悩んだ人です。悩みの金メダルチャンピオンです。悩みに悩んだからこそ、素晴らしい教えが今でも伝えられ続けています。悩むことは悪いことではありません。素晴らしいことなんです。

 飛行機が飛んでいるのも、医療が発達して寿命が伸びたのも、分業が発達して生活が豊かになったのも、これまで多くの先人が悩んできたからこそです。悩みは決してネガティブなものではないと言いたいですね。

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