野口聡一さん宇宙船搭乗へ。宇宙食「からあげクン」開発の苦闘とやりがい
2020年11月16日、宇宙飛行士の野口聡一さんが国際宇宙ステーション(以下、ISS)へ向います。日本人宇宙飛行士の宇宙滞在はおよそ2年ぶり。昨今では宇宙でのクオリティオブライフを大きく左右する「宇宙食」に注目が集まっており、開発に乗り出すメーカーも増えてきています。
宇宙食の開発にはどのような難しさがあるのでしょうか。宇宙日本食を開発した、森永乳業株式会社、日清食品ホールディングス株式会社、そして株式会社ローソン、株式会社ニチレイフーズを取材しました。
食を通して宇宙飛行士をサポートする「宇宙日本食」
日本人宇宙飛行士が誕生した当初、宇宙での食事はアメリカやロシアが開発したものがほとんどでした。
しかし、最近ではISSに長期で滞在する日本人宇宙飛行士に、日本の味を楽しんでもらうことで、精神的なストレスを和らげたり、仕事の効率を向上させたりする目的で、「宇宙日本食」の開発が宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)を中心に進められています。
ISSには、アメリカやロシア、日本のほかに、カナダ、ヨーロッパと15か国の宇宙飛行士が滞在するため、宇宙飛行士同士で各国の宇宙食を交換して食べることもあるそうですが、その中でも日本食は人気なのだとか。
「おいしい牛乳」や「ビヒダスヨーグルト」などで親しまれている乳製品メーカーの森永乳業株式会社(以下、森永乳業)は、2020年6月に大人向けの粉ミルク「ミルク生活」を宇宙でも飲める「森永ミルク生活(宇宙用)」として、宇宙日本食の認定を取得したことを発表しました。
粉ミルク事業製造100周年の節目
担当者によると、ミルク生活は宇宙用として開発する以前から、宇宙食の安全基準や必要な保存期間を満たしていましたが、宇宙日本食として認証を取得するには、1,000ページを超える資料を作成する必要があったとのことで、そのハードルの高さが伺えます。
森永ミルク生活(宇宙用)の開発に携わった、森永乳業マーケティング統括部の小菱悟さんは、次のように語ります。
「2020年は弊社粉ミルク事業製造100周年の節目であり、長年取り組んできた粉ミルクが宇宙へも行くことを社員一同大変嬉しく思っています。地球で働いていることが宇宙にも繋がるという夢をみさせていただき、それが実現できることは企業冥利に尽きます。また、弊社の安全、安心がJAXA様にも認められました。今後も真摯にすべての品質に自信を持ってお届けして参りたいと思います」