ニトリに買収されるホームセンター「島忠」の侮れない実力
ニトリの提示は、純資産に対してプラスの買収額
では、ニトリ提示の買収額もDCMと同様に比較してみましょう。
島忠の純資産額:1,886億9,800万円
ニトリ提示の買収額:2,142億5,352万円(=5,500円×買付予定数38,955,187株)
こちらは明らかに島忠の純資産額に対してプラスの買収額となっています(差額は255億円)。さらに上記の株数はニトリ提示の「買付代金の総額」から逆算したものであり、より厳密に言うとニトリ側は買い付け予定株数の下限を「50%」としているものの、買い付け予定株数に上限を設けていません。
そして、一連の動きを受けて島忠の株価は上昇しており、11月6日の終値は「5,510円」と、ニトリ提示の条件をも上回りました。これらを踏まえて、島忠は最終的にニトリを選ぶという判断をしました。
業績:伸び止まりがあるものの、堅調な推移
では、肝心の島忠の実力はどのようなものなのでしょうか。財務諸表の分析を通してみていきましょう。
直近10期分のデータをグラフ化しました。営業収益は1400億~1600億円のレンジで推移しており、最終黒字が続いていることから、「伸び盛り」というわけではないものの、堅調な推移と言えます。
売上推移のみを見ると島忠が大手2社から買収オファーが出ている理由がわかりにくいのですが、島忠の特徴は、不動産賃貸収入も一定程度ある=自社物件が多いということです。
グラフ上だと数値の変動がほぼないように見えますが、2020年8月期実績を例にとると、68億4,500万円となり、まとまった収入になっていることがわかります。また、営業収益に対する比率も年々伸びており、本業=ホームセンター運営以外での重要な収益源であると言えます。
小売業の場合、店舗開発については賃貸契約で進めるケースが多く、自社で物件を所有し、賃貸収入が無視できないレベルで増えているというのは珍しい状況です。
また、ニトリはかねてより島忠の物件所有能力を高く評価しており、当時の物件購入の中心人物(須藤文弘氏)を口説き落とし、2001年にニトリに迎えることに成功しています。それ以降のニトリの出店攻勢は皆さんも知るところですが、もともと高く評価していた島忠そのものや、その物件が割安で手に入れられるチャンスが到来したとしたら、名乗りをあげるのも当然の流れと言えそうです。