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手取り15万の医療事務の嘆き「夏のボーナスがコロナで半減…」

学び

両親も当初は喜んでいたが…

安月給

 今はまだ独身である萩村さんは実家住まい。いくら給料が安いといっても生活に困るほどではありません。

「家に食費を入れ、車のローンなどを払っても月4万円前後は貯金できています。とはいえ、ある程度稼いでいる人が相手じゃないと、結婚して子供を養うのは難しいでしょうね。相手もいないうちからそんなことを考えるのもどうかと思いますが……。

 地元の人間なら誰もが知っている病院で、周りからはうらやましがられたりもするのですが、実際にはそう思われるほど環境は良くないっていうのも皮肉なものですけどね」

 両親も最初は病院に就職できたことを喜び、特に母親は近所の人に自慢していたほど。でも、萩村さんから実情を聞いて落胆。最近では「早く転職したほうがいい」と言ってくるようになったといいます。

大学を辞めなければよかった

「それも分かるんですけど、ウチは田舎ですから求人の数だってもともと少ない。将来は両親の面倒を見なきゃいけませんし、自分だけ地元を離れて転職というわけにもいきません。

 そう考えると、給料は安くてもまだ今の病院に勤め続けたほうがいいのかなって。社会的信用になるのは事実ですから。ただ、こんなことになるなら大学はちゃんと卒業しておくべきだったなとは思いますね。

 いくら田舎であるウチの地元でも給料がもっともらえるところに就職できた可能性はありますから。もし昔の自分の会うことができれば殴ってでも『大学だけは絶対辞めちゃいかん!』って説得するんですけどね(笑)」

 そうやっておどけますが、最終学歴は高卒。病院の事務方の管理職はほぼ全員が大卒者で占められており、現状ではこのまま勤め続けても出世は難しそうです。

「だからといって自分に与えられた選択肢も多くない。結局は安月給だと文句を言いながらもこのまま働き続けるしかないのかもしれません」

 20代半ばで手取り15万円を許容せざるを得ない人生。彼女のように安月給で我慢している若者は、きっと大勢いるのでしょう。雇う側も、業績が悪くて払えないのかもしれませんが、若者が希望を持てない社会のひずみを垣間見てしまった気がします。

<取材・文/トシタカマサ イラスト/パウロタスク(@paultaskart)>

ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中

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