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全米で抗議デモが広がる理由。日系企業への被害も

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 アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリス市で5月25日、白人警察官が逮捕した黒人男性を窒息死させたことがきっかけで、大規模な抗議デモが全米各地に広がっている。

デモ

Miami Downtown, FL, USA – MAY 31, 2020 (C) Hanna Tverdokhlib

 その一部は暴徒化し、商店が略奪、放火されるなどして、州兵が出動する事態に発展している。ミネアポリス市では数日間続くデモで窓ガラスが割られ、建物や商店など数百棟が破壊され、近郊のセント・ポール市でも商店170店舗以上が略奪されたという。

キング牧師が殺害されて以来の規模

 一連の抗議デモは、ニューヨークやワシントンDC、ボストン、ロサンゼルス、フィラデルフィア、マイアミなど各地に飛び火し、治安部隊が暴徒化するデモ隊を強制排除した。

 ニューヨークでは一晩で350人以上が、フィラデルフィアでは200人以上が逮捕されたともいわれる。トランプ大統領は5月31日、ツイッターで「民主党の市長や知事は、無政府主義者らにもっと断固とした姿勢を示せ」「暴力行為を扇動している極左勢力“ANTIFA”をテロ組織に指定する」などと発信している。

 ANTIFAとは「アンチファシスト」の略で、ドイツに始まり他国へも広がった社会運動集団だ。しかし、現行の法制では同団体を「テロ組織」に指定する法的根拠がないため、トランプ大統領の指摘には疑問の声も多い

 黒人差別に端を発した衝突は何度も起きているが、これほどまでに規模が拡大したのは、黒人の自由・権利の拡大を訴えてきたキング牧師が殺害された1968年以来のことだという。

アジア系、ヒスパニック系も多く参加

アジア

画像はイメージです

 だが、今回の抗議デモや暴動の原因は、白人VS黒人という人種的な対立が根底にあるのではない。抗議デモには、警察官に抗議する多くの白人市民だけでなく、新型コロナウイルスによって誹謗中傷の標的にされるアジア系、ヒスパニック系の住民も多く参加している。

 なぜ、5月25日の事件で一気に抗議デモが全米各地に広がったのか。一言でいうと、若者が持つ、雇用など経済格差に対する不満が根底にある

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済的打撃も影響して、長年積もりに積もった若者たちの経済的不満や怒りが、同事件をきっかけに一気に爆発したのである。

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