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同僚の前で「部下を叱ったら」パワハラ?最新ハラスメントの境界線

学び

 パワハラと言われるのを恐れて部下を叱りにくい、服装を褒めるとセクハラになるのではないか……。日々、ハラスメントのニュースを目にするなか、ハラスメントの境界線に頭を抱えるサラリーマンに向けて、専門家による指針を解説する。

相談は8万件!増え続ける職場のパワハラ

 先輩に殴る蹴るの暴力を振るわれ、「早く仕事を辞めてほしい」などの暴言を日常的に受けていたという被害者。頼りになるはずの上司は見て見ぬ振りをし、指導などの対応もしてもらえなかった……。

 これは厚生労働省が公表したパワハラのひとつの事例。同省の最新の報告によると、2018年度に寄せられた民事上の個別労働紛争の相談件数のうち、パワハラなどの「いじめ・嫌がらせ」は8万件を超え、7年連続で最も多かったという。

 増え続ける職場のパワハラを防ぐべく、企業にパワハラ防止措置を義務づける「女性活躍・ハラスメント規制法」が、2019年5月29日に参院本会議で可決・成立した。

 大企業は2020年6月1日から、中小企業は2022年4月1日から義務化され、就業規則でパワハラを禁止することや、相談窓口の設置が義務づけられるほか、指導しても対策を講じなかった企業名を公表する。

厚生労働省が指針を作成したが…

 だが、急ごしらえで施行される法律だけに穴も多い。長年労働問題に取り組む笹山尚人弁護士は「パワハラの定義が狭く、不十分。病院や介護現場で起こるハラスメントがカバーできていませんし、フリーランスや就職活動中の学生も法律では対象外になっています」と、主な問題点を挙げた。

「パワハラに該当しない事例をわざわざ挙げるのも問題です(下記参照)。これらの事例のようにやれば、パワハラにならないと考える事業主がいるかもしれません」

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【パワハラ類型と主な具体例】
※厚生労働省の資料を基に作成

■ 身体的な攻撃
該当する主な事例:叩く、蹴るなどの暴力を振るう、相手に物を投げつける
該当しない主な事例:誤ってぶつかる

■ 精神的な攻撃
該当する主な事例:同僚の前で叱責する、長時間にわたって繰り返し執拗に叱る
該当しない主な事例:マナー違反を何度注意しても改善しないときに強く注意する

■ 人間関係からの切り離し
該当する主な事例:1人だけ別室に席を移す、強制的に自宅待機を命じる
該当しない主な事例:新規採用者の育成で、短期集中研修などを個室で実施する

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