スターバックスが「無料Wi-Fi」を始めた理由。元CEOが語る経営論
ボディショップでつくった「7つのお願い」
――具体的には、どのようなことをされたのでしょうか。
岩田:ボディショップでは、アニータの理念やお店でのヒアリングをもとに、「7つのお願い」を作り、社長就任あいさつでみなさんに伝えました。
=====
1. 一緒に働ける縁を大切にしましょう。
2. ともに人間成長しましょう。
3. 社長が交代しても具体的な行動を起こさなければ何も変わらない。「ひとりひとりが変革に参画する」気持ちで、会社をよくして行きましょう。
4. 社長ではなく現場を見て仕事をしましょう。現場重視・小売の原点に戻って仕事を振り返りましょう。
5. 自分の大切な友人を自宅に招く気持ちで接客しましょう。
6. 創業の原点に戻り、ファイブ・バリューズを大切にしましょう。常にフィードバック視して(PDCAサイクル)を仕事に取り込みましょう。
7. ブランドは「お約束」。ザ・ボディショップが目指すブランドにすべての仕事が有機的につながるよう、細部にこだわりましょう。
=====
例えば5番目の「大切な友人を自宅に招く気持ちで接客しよう」ですが、お店に行くと監視カメラが設置されている。万引き防止のために設置されていた監視カメラは物理的に取り外せないところ以外は、ほぼ全店撤去しました。
お客様を大切な友人だと言っているのに、お客様のことを疑っているのはおかしいからです。理念を守るために、もし万引き率が上がっても仕方がないと腹をくくりました。ところが、結果として万引き率は下がりました。
監視カメラ廃止したら万引き率が低下
――監視カメラを外したのに万引き率が下がったんですか?
岩田:教育や待遇を改善することにより、お店のスタッフの皆さんがお客様に目を配り、声をかけ、接客を丁寧に行うことによって、万引き被害を減らせたのだと思います。
また、私が社長を務めた4年の間にザ・ボディショップは売上げを大きく伸ばしました。就任当初67億円だった売上げは、退任した2008年度には138億円。利益は約5倍以上、店舗数は約100店から176店まで拡大することができました。
さらに、うれしかったのは就任当初22%だった離職率が、2007年には2%にまで劇的に下がったことです。従業員の満足度も大きく上昇しました。これは教育や待遇改善に力を入れ、人材の定着を図った結果です。
社員たちの欲求がある程度、待遇や報酬面で満たされると、その後は社員たち自身が成長していることを実感できるかどうかが重要になるからです。