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パーク24、駐車場だけじゃない意外なビジネス戦略

ビジネス

「タイムズ スパ・レスタ」を支える現場力

 なお、「タイムズ スパ・レスタ」では月替わりのイベントも充実しており、スタッフの対応もとても気持ちが良いです。これだけのサービスクオリティであればタイムズ24のIRなどでも定性的成果として簡単に触れてよいように思うのですが、10年分の「決算説明会資料」および「株主通信」を見てもほとんど情報がありません。

 ただ、各種求人サイトに掲載された採用情報の中では「現場のアイディアを重視する」点が具体例と共に強調されています。

<具体例>
・週1回企画ミーティングを実施し、社員が持ち回りで新しいサービスやイベントをプレゼンしている。良いアイデアはどんどん実行する
・リクライニングチェアの横に耳栓とアイマスクを用意したり、海外の高級シャンプーやアメニティを用意するなど、顧客にとってより良い空間をつくるためのアイディアを採用

 施策の具体例がここまで連発される求人票は例がありません。ほかにも書ききれないほどのアイディアが自発的に考案・実行されているのでしょう。そのアイディアの痕跡は「公式blog」やTwitter・Instagram・Facebookといった各種SNSからも十分にうかがえます。

 また、自発的に出されたアイディアの中で最も印象的な例が「池袋で閉店が決まった人気つけ麺屋『とんがらし』のメニュー『広島流つけ麺』を併設のレストランで引き継いだ」ことでしょう。

 池袋圏のビジネス&カルチャーニュースを扱う「池袋経済新聞」によれば「人気メニューを街からなくすのは惜しい」という心意気で店舗に話を持ち掛け、「とんがらし」のオーナーから直々に指導を受けて、材料から作り方、トッピングに至るまで再現するという念入りな準備を経て、スパのレストランで提供されるようになったといいます。

 通常、商業施設がここまで手が込んだ引き継ぎをするケースは考えにくく、ここにも「タイムズ スパ・レスタ」の顧客志向の現場主義が表れているように思います。

海外・国内「その先の一手」を打つ姿勢

 これらの情報を総合すると、タイムズ24社は現状の安定に満足せず、常に「その先の一手」を打っている企業であると言えます。

 国内事業はすでに駐車場事業で盤石な基盤を築いたうえでカーシェアリング・レンタカー事業に進出しています。ただ、国内の運転免許保有者である8231万人(平成30年度 )のみを事業の対象にし続けていれば、日本の人口減少による事業への影響は早晩避けられません。

 それを見越しているからこそ、海外7か国(韓国・台湾・イギリス・オーストラリア・ニュージーランド・シンガポール・マレーシア)および他業態へ積極的に進出していると考えられます。

 また、相対的に不慣れであると考えらえる接客・サービス業でも現場のアイディアを重視し、「顧客に喜ばれる」サービスづくりを推進し、来客数増加につながっています。駐車場ビルに付随する他業態が将来の事業セグメントになる日もそう遠くないでしょう。

パーク24の「ホワイト/ブラック度」判定

パーク24:★★★★☆

 土地を活用した業態であること活かして、着実に業容拡大している企業です。海外を含めて、先を見据えた打ち手も効果的に働いており、グループ内の経営は安定していると考えられます。

 また、現場の意見を吸い上げる体制の部署もあり、楽しんで働けそうです。

<TEXT/ブラック企業アラート(@blackc_alert)>

ブラック企業を生き抜いた歴戦のプロダクトマネージャーが、公開情報からホワイトorブラックを判定し、率直な理由とともにお伝えします。
Twitter:@blackc_alert
note:ブラック企業アラート

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