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「妊婦には任せられない」職場のマタハラを防ぐには?

学び

「忙しいときに妊娠するなんて」の発言もNG

 2つ目は「状態への嫌がらせ型」です。これは女性労働者が妊娠したこと、出産したことそのものに関する言動により、就業環境が害されるものです。具体的な例を見てみましょう。

● 妊娠したC子さんに社長や上司が「妊娠したなら辞めてもらうしかない」「妊婦には仕事を任せられない」「忙しいときに妊娠するなんて」などと言うこと。
 
 厚生労働省の調査によれば、妊娠などを理由とする不利益取扱い行為をした者として、トップは直属の男性上司(約20%)、次がさらに上位の男性上司(約15%)ですが、3番目に多いのが直属の女性上司、4番目が女性の同僚、部下となっており、それぞれ約10%の割合を占めています。このように、セクシュアルハラスメントと異なり、同性間でも成立しうる可能性が高いのがマタニティハラスメントの特徴のひとつです。

企業がマタハラを起こさないには

ハラスメント

 それでは、マタニティハラスメントをおこさないためにはどのような注意が必要なのでしょうか。

 第一に、会社の処遇などに違法性がないかという点です。セクハラやパワハラは、ハラスメントを行った行為者の言動が違法であるかが問題になりますが、マタハラは会社の処遇や制度、措置に違法性があり、問題となることがあります。具体的には妊娠したら昇進できない、不利益な配置転換をするなどです。

 第二に、妊娠した労働者が体調不良、能率が低下することで、その業務をカバーするため、周囲の労働者の業務負担が増大することへの配慮です。特定の労働者に負担がかかるようでは、その労働者に不満がたまるのは当然のことです。周囲に過度な負担がかからないよう、業務配分を適切に見直し、業務のそのものの見直しや効率化を行います。

妊娠・出産する本人がすべきことも

 第三に、妊娠・出産に伴う法律で定められた制度や働き方について、日頃から社内に周知し、一定の理解を深めておくことです。そうすることによって「いつまで休んでいるのか」「残業をしないのか」などという疑問の解消にも役立ちます。

 第四に、妊娠・出産する労働者本人も、周りへの配慮と感謝を忘れてはならないということです。法律で定められた制度であるとはいえ、権利を主張するたけでは円滑に進まない場合もあるでしょう。

 マタニティハラスメントに限らず、ハラスメントの事実を認識しても、会社が問題を軽く考える、あるいは内密に、あるいは個人間の問題として処理しようとするケースが見受けられます。

 こうした対応は、問題をこじらせて解決を困難にします。会社は日頃から体制を整え、真摯にかつ適切な対応がとれるようにしておくべきでしょう。

<TEXT/澤上貴子>

さわかみ社会保険労務士事務所代表。特定社会保険労務士/健康経営エキスパートアドバイザー。会社の発展を支え、従業員のモチベーションを育む労務コンサルティングを目指す。20年以上の豊富な実務経験にもとづく、的確で時には攻めの姿勢のアドバイスと、きめ細やかな対応が評価を得ている。労働諸法令に関する指導・相談・手続・講師業、その他多岐に亘る分野において、良心と強い責任感をもって展開している

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