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なぜクラウドファンディング発の映画が増えているのか?大ヒットの「カメ止め」も

ビジネス

売れるものより、作りたいってものを

大高健志

 製作委員会方式には、一長一短がある

――それが純粋な商業映画とちょっと違うところなんですね。予算面ではどうなんですか。

大高:先ほども言いましたけど、いろいろなお金がかかるところの制作費を、製作委員会方式の投資とか融資とかにしてしまうと、やはり「投資した資金の回収の見込み」が強く問われるため、企画によっては「作りたいってものよりも、売れるものを」と、初期の企画から変容してしまう可能性もある。

 クラウドファンディングだと、1番大事なファンがどっちらけになるとということを防げます。あとは「過去映像をみんなから募集します」みたいなのをやっていたんですが、作る過程をオープンにして、協力関係を築いていきます。映像を提供する人は楽しいし、嬉しいし、それが本編に映ったら感動するし、一緒に作っていくのも盛り上がる要因だと思います。

クラウドファンディングは第三の道

――大高さんがクラウドファンディングをやろうと思ったきっかけはなんなんですか。

大高:社会人を経てから入学した東京藝術大学の大学院で、映画とか映像の勉強したのですが、その中で、映画製作のために必死で資金集めをしている海外の状況を知ったことが大きかったです。学生レベルではなく、社会的に有名な監督やプロデューサーでもお金集めるのが大変だと。

 その理由も、投資で集めたものを利益で返さないといけないから、とか。だからキャストのネームバリューが重視されたりするんです。もちろん本当に作りたいものがあればいいんですけど、資本の論理で動くとなかなか難しい部分もある。ハリウッドのようなグローバルレベルでの資本の論理でないとなかなか両立が難しい。

 一方、フランスは助成金が手厚くて、売れることだけを重視してないというか、フランスが文化のルールメーカーであるというのが戦略にあるから、クオリティで戦っています。

 で、日本はどちらなんだろうかと考えさせられました。そのなかで、第三の道ってなんだろうって考えた時に、ファンから集めるというエコシステムなら、市場規模の話でも、かつ国の助成金でもない形で、映画とか音楽とか限界アートとか、クリエイティブ全般を支えられるような応援ができると思ったんです。

 とはいえ、当時の日本にはまだクラウドファンディングがなかったので、自分でやってみようかなと。でも、それによって、これまで投資会社とかに通らなかったものが、通るんです。『カメラを止めるな!』(以下『カメ止め』)がいい例ですけど、当時、上田慎一郎監督は無名でしたよね。でも、面白いと思わせたら集まるんです。

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