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なぜクラウドファンディング発の映画が増えているのか?大ヒットの「カメ止め」も

ビジネス

初期にコアなファンを作れた『カメ止め』の成功

高山

ビジネス面から見ても、クラウドファンディングはまだ伸びる

――『カメ止め』の成功の背景には何があったと考えますか。

大高:「ENBUゼミナール」という映画関係の養成スクールが年に2本、ワークショップを通じて、若手の作品を公開する企画を毎年やっていて、そこでクラウドファンディングで映画の製作資金を募ったんです。

 昨年は上田監督の作品だったのですが、集まり方の熱気が例年と違いました。上田監督もそうですけど、役者さんたちにも「絶対面白くなる」という確信みたいなものがあって、ツイッターで「絶対損はさせない」みたいなことをすごく熱く発信していて、周りの人も「そんなに言うならクラファンしてみるか」みたいになっていった。

 だから、有名人が何かどーんと言っているわけではなく、一人ひとりの熱量が草の根的に何らかの確信と熱量をネットの空間でも感じさせられたから、そこでお金が集まっていったのかもしれません。

 もちろんクラウドファンディング全体でいうと1000万~2000万円規模のものもあるなかで、『カメ止め』は300万円の目標のうち集まったのは150万円ですけど、金額以上の熱量を個人的には感じました。

 クラウドファウンディングで応援した人たちが、劇場公開前に見て、「やっぱりすごい」「応援してよかった」と口コミで広がっていった。だから、公開後にここまで話題になったのは、初期のコアなファンをクラウドファウンディングで作れたのが、結構大きかったのかなって個人的には思っています。

――これから音楽映画は増えていくと思われますか。

大高:増えていくとは思いますね。30~40代が、自分の青春時代に聞いていたバンドの企画というのは応援も集まりやすい。『ボヘミアン・ラプソディ』も同じ文脈だったと思いますけど、お金を出せる人が昔を振り返りたいという企画は盛り上がりやすい。いま実際にそういう企画が動いていますし、ビジネス面から見ても、まだまだ伸びるジャンルだと思います。

【大高健志】
1983年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、外資系コンサルなどを経て、2011年にクラウドファンディングプラットフォーム「MOTION GALLERY」を設立。2017年、誰でも自分のまちに映画館を発明できるプラットフォーム「POPcorn」設立。日本各地の場所・人・映画をなめらかに繋ぐ事で、特別な場所にみんなが集う時間がまちに次々生まれるべく挑戦中

<取材・文/神田桂一 撮影/スギゾー。>

ライター。初の単著を秋に発売予定

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