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親の遺産が引き出せない。もしもの時、知っておきたい対策

コラム

相続ができずに、公共料金の引き落としが滞る

 番組の司会を務めるNHKの武田真一アナも、5年前に父を亡くした際に、「準備を怠っていたために苦労した」と当時の経験を語っていた。

 武田アナの父と母は、熊本で2人暮らしをして、生活費は父親の名義の口座で管理をしていた。しかし、父が亡くなった後に、口座が凍結されてしまったため、相続の手続きを取らなければ、日々の公共料金の引き落としもできない状況に陥ってしまった。

 また、武田アナには4人の兄弟がおり、日本各地の別々の場所で暮らしていたが、そのために相続に必要な書類をやり取りするのが「一苦労だった」という。

制度自体に“落とし穴”も。ここに気をつけて

お金 年金

 番組の中では、親族を後見人として選ぶことができると説明されていたが、最高裁判所事務総局家庭局の「成年後見関係事件の概況(平成30年1月から12月まで)」によると、後見人として親族が選ばれることは、わずか23.2%となっており、76.8%のケースが親族以外(弁護士、司法書士、社会福祉士など)を選任している。

 親族が後見人になった場合に比べて、横領や着服されてしまうトラブルは少なくなるが、内閣府の調査によると、平成27年には職業後見人による不正は37件、被害額は約1億1000万円にのぼっている。

 また、職業後見人以外の不正は484件もあり、被害額は29億7000万円。トラブルを完全に回避できるというわけではなさそうだ。

「大変だった」という声が続々。備えを怠らないで

「成年後見人制度を使って、すごく後悔しています。もっと勉強しておけば良かったです」
「最近は、ネットバンキングも使っている人が多いし、親が元気なうちにきちんと整理しておくべきです。私も銀行と粘り強く交渉しました」

 番組放送後のSNSには「私も大変な目に遭った」という人からの声が少なくなかった。

 お金の問題は、親子関係や兄弟関係が良好であっても話し合うのは難しく感じてしまうものだ。ましてや信頼関係が構築されていない場合は、さらに困難を極めるといっても過言ではない。それでも面倒臭がることなくお互いに話し合い、もしもの時に備えておくことが、後々の幸せに繋がる。

 どちらの制度を利用するにしても、メリットやデメリットを見極め、状況に合った判断をすることが大切だ。

<TEXT/湯浅肇>

写真をメインに数多くの時事ネタやマルチメディア関連の記事も執筆。常に斬新な切り口で情報発信を目指すアラサー男子

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