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海賊サイト「漫画村」の運営者を特定との報道が。いったい何億円の損害賠償が必要か

ビジネス

「漫画村」のブロッキングは正しかったのか?

講談社

講談社本社 CC BY 2.5 ©Lombroso

 前述のように、2018年4月13日に政府が、漫画村など3件のサイトに対してブロッキングをおこなうように要請したことが大きな議論になりました。

 ブロッキングに賛成していたのは出版社が多く、集英社は「海賊版対策において大きな前進」との声明を発表し、KADOKAWAも「抜本的な解決に向けた大きな一歩である」との声明を発表しました(参照:「集英社」「KADOKAWA」)。

 また、講談社は、漫画村は氷山の一角に過ぎず多数の海賊サイトが存在していることを指摘しており、「今後も刑事告訴や民事での提訴など断固たる姿勢」を崩さないとの声明を発表しています(参照:「講談社」)。

 一方、一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会は「電気通信事業法が罰則を伴って禁止する、通信の秘密の侵害にあたる行為」だとし、今後このような要請の歯止めが効かなくなる恐れがあると懸念を示しています(参照:「一般社団法人 日本インターネットプロバイダー協会」)。

 また、一般社団法人モバイルコンテンツ審査・運用監視機構も、同様に「政府(行政権)がサイトの違法性を認定してサイトブロッキングを要請する行為は、事実上の検閲を要請するもの」と反発。議論が十分になされずにサイトブロッキングを要請することは、「法の支配の観点から見てもとても容認できない」との見解を示しています(参照:「一般社団法人モバイルコンテンツ審査・運用監視機構」)。

 もちろん、ブロッキングに批判的な意見も、海賊サイトを容認しているわけではなく「通信の秘密の侵害」や「政府の検閲」に当たり、国民の権利が脅かされることに対して懸念を抱いていると見るべきです。

クリエーターに利益が正しく還元されること

 ただ今回、日本の弁護士が正規の手続きによって漫画村の運営者を特定できたことを受けて、ブロッキングは「早まった対応だったのではないか?」という見方が強まっています。

 2000年代の初頭、「Napster」と呼ばれるファイル共有サービスで音楽ファイルが共有され、世界的な問題になりました。この事件も多くの著作権侵害を引き起こし、政府や企業を巻き込んだ大規模な事件へと発展しました。

 日本でも「Winny」と呼ばれるファイル共有サービスが流行し、問題になり、連日のように報道されていたことは記憶に新しいでしょう。

 デジタルデータは複製が容易なため違法アップロードの問題が、形を変えて繰り返し起こっています。一刻も早く、クリエーターに利益がきちんと還元される仕組みが整えられることを望んでやみません。

<TEXT/湯浅肇>

写真をメインに数多くの時事ネタやマルチメディア関連の記事も執筆。常に斬新な切り口で情報発信を目指すアラサー男子

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